(※写真はイメージです/PIXTA)

「高齢者が元気に働く社会」を推進する一方で、65歳以上が働き始めると各種社会保険料の負担が増える仕組みが、「逆インセンティブ」として疑問の声を呼んでいます。再就職後に「介護保険料が上がった」と戸惑う65歳男性の声を通じて、「働いたら損」という印象につながる制度のあり方と、その先にある高齢社会の課題を考えます。

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    「また働こうと思ったのに…」65歳男性の嘆き

    東京都在住の65歳・高橋正人さん(仮名)は、定年退職後も体力に不安がなかったため、再就職を選びました。ハローワークを通じて近隣の中小企業に再就職。週5日、午前中のみの勤務で、月収は10万円ほどでした。

     

    「年金だけじゃ足りないし、まだまだ働けると思ったんです。ところが、再就職して数ヵ月後、住民税の通知を見て驚きました。介護保険料が急に跳ね上がっていたんです」

     

    高橋さんの住む自治体では、前年の所得に応じて介護保険料の段階が決まります。再就職により年収が増えたことで、介護保険料が年間3万円以上アップ。「働くことでむしろ出費が増えるなんて…」と、やるせなさを感じたといいます。

     

    65歳以上の介護保険料(第1号被保険者)は、原則として「前年の所得」に応じた所得段階別で決まる仕組みです。

     

    たとえば、ある自治体では保険料段階が13に分かれており、非課税の年金のみの人と、再就職などで所得がある人とでは、年間の保険料に最大で数万円の差が生じます。

     

    高橋さんのように、働くことで自立的に生活しようとする人ほど保険料が上がるという逆転現象は、制度を知らない人にとっては不公平感につながりやすい構造です。

     

    さらに、高橋さんの場合は、再就職で給与収入が発生したことで、住民税の控除枠が変動。結果として、年金にかかる住民税も増えました。これにより、「税金も保険料も上がって、働いている実感が得られにくい」と感じたと語ります。

     

    「どうして“働くな”と言われているような制度なんだろうと思ってしまいました。元気なうちは働いて、社会とつながっていたかったのに…」

     

    介護保険料は、65歳になると原則として年金からの天引き(特別徴収)となるため、給与所得者だったときに比べて、増減に気づきにくい側面があります。

     

    また、市町村ごとに保険料の算定基準や所得段階の金額が異なることも、複雑さと不公平感の一因となっています。

     

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