「墓を守ってほしいの」重すぎる母の言葉
東京都内で暮らす滝沢梨花さん(仮名・40歳)は、実家の母(75歳)と電話で話すたびにどんよりとした気分になります。
原因は、最近母が自分が入るお墓について心配し始めたことです。「あんたに墓を守ってほしいの」と、言ってくるようになりました。
梨花さんの実家は長野にあります。都内からのアクセスは決して悪くありませんが、母とは距離を置いて暮らしてきました。小さい頃、母は特定の宗教に熱心でした。梨花さんは、毎月の行事や集まりに連れていかれ、振り回された記憶が今も残っています。梨花さんが大学進学で上京したのを機に、母とは物理的にも精神的にも距離が生まれ、実家に帰ることもほとんどなくなっていました。一応、梨花さんには5歳離れた弟がいるのですが、宗教や母に関することは梨花さんが一手に引き受けていたため、弟は家族に対してマイナスの感情は持っていないようです。
実家で飼っている猫が心配なこともあって、それでも定期的に母とは電話で話しているという梨花さん。母とは、電話で話す分にはいいのですが、実家に帰って3日経つと喧嘩になります。だから、2週間に1回くらいの頻度で、電話で近況や猫について軽く話す程度が梨花さんにとってはちょうど良い距離感でした。
そんな母が最近になって、自分の死後のことを心配し始めました。お墓がないままでは不安だという気持ちは理解できます。しかし、梨花さんには「墓守になるつもりも、母が建てるお墓を守るつもりもない」というはっきりとした思いがありました。
梨花さんの家は父親が次男だったため分家にあたり、お墓がありません。父親(80歳)は昔から母の宗教にノータッチ。お墓についても「お前たちでうまくやってくれ」と言うだけで頼りになりません。父の無関心ぶりに梨花さんは「ってか、お父さんが一番先に入る可能性があるお墓だよ? そういえばお父さんは昔から家庭のことには無関心だったな。お母さんが宗教にハマったのもわかるかも……」と思うようになりました。
とはいえ「たとえ地元でお墓を建てても、ほとんど帰らないだろうし、墓参りに行くたびに宗教に振り回されたことを思い出してしまうんだろうな」と予想がつく梨花さん。さらに、母が宗教にお布施を続けてきたため、実家に十分な蓄えがあるとは言い切れません。高額な一般墓よりも、経済的に負担が少ない方法を選びたいという事情もあります。そこで梨花さんは、「都内での樹木葬を提案できないか」と考えるようになりました。
そんな折、梨花さんが目にしたのが、墓じまいやお墓に関するニュースでした。最近墓じまいをする人が増えていて、お墓の形もそれぞれという内容でした。
