(※写真はイメージです/PIXTA)

「退職金で住宅ローンを完済すれば、あとは悠々自適」そんな老後設計が、いま大きく揺らいでいます。郊外の広い一戸建てに長年住み続けていた高齢夫婦が、「固定資産税や修繕費が重荷に」「通院も不便」「子どもも帰ってこない」といった理由から、やむなく持ち家を捨てるという選択をするケースが増えています。持ち家=資産と思われがちですが、それが老後の暮らしを圧迫する「負動産」となる場合も少なくありません。本記事では、築30年超の戸建てを手放し、市営住宅に転居したある夫婦の事例を紹介します。

「もう無理だね」夫婦が選んだ市営住宅1Kへの転居

悩んだ末に2人が決断したのは、「持ち家を売って市営住宅に住み替える」という選択でした。

 

自宅は築年数が古く、売却価格は1,500万円ほどにしかなりませんでしたが、それでも老後資金としては心強い貯えになりました。

 

現在は、駅から徒歩圏内の市営住宅に入居し、1Kながらもバリアフリーでエレベーター付き。「狭いけど掃除も楽。買い物も病院も歩いて行けるし、家賃は月2万円ちょっと。正直、今の方が楽です」と紀子さんは笑います。

 

老後も持ち家で安心、という“神話”は、いま大きく見直されつつあります。

 

国土交通省『令和5年 住生活総合調査』によれば、高齢者の住み替えニーズは年々増加しており、「広すぎる」「段差が多い」「管理しきれない」などの理由で、持ち家を手放す高齢世帯は決して珍しくありません。

 

都市部では、バリアフリー仕様の賃貸住宅や「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」も増えており、持ち家に固執しない暮らし方の選択肢が広がっています。

 

高齢期の暮らしには、「住環境の安全性」「日常生活の利便性」「経済的負担の軽減」の3つが欠かせません。特に、固定資産税や修繕費などの隠れコストは見落とされがちですが、老後の生活設計において大きなポイントになります。

 

また、高齢者向けには、「高齢者住まい法」による住替え支援や、「生活困窮者自立支援制度」「介護保険制度」などの活用も可能です。

 

「この家で一生」と決めつけず、自分たちの年齢や体力、経済状況に応じて住み替えを考えることも、安心して暮らすための「積極的な選択」といえるでしょう。

 

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