ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【基本編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
発覚した非情な計画
それでも、得意先への納期が迫っている以上、今日一日何もしないわけにはいきません。そこで私たちは、取引のある原材料メーカーと化学・機械系専門商社の担当者に片っ端から電話をかけ、製造工程に必要な溶液の混合方法などに関して、恥を忍んで問い合わせてみました。結局、メーカーや専門商社に聞いても細かいところまでは分からなかったのですが、午後4時過ぎになって、ようやくつかまった専門商社の担当者がとんでもない情報を教えてくれました。
「そういえば2〜3週間前だったかな、射出成形機とかスタッキングマシン(どちらもロストワックス精密鋳造に必要な機械)をK製作所に納品しましたよ」
一瞬、耳を疑いました。K製作所は私たちの会社の得意先で、現にその日もK製作所に納品するための機械部品を製造するはずでした。その得意先が、鋳造に必要な機械一式を商社から購入したというのです。もしかして、自社製品に必要な部品を自分たちで鋳造しようとしているのではないか、という疑念が生まれました。
「K製作所さんは、新たに鋳造の仕事でも始めるつもりなんですかね?」
するとその担当者は事もなげにこう言いました。
「ええ、なんでも近々、ロストワックスに詳しい技術者を何人か、どこかの鋳造メーカーから引き抜くつもりらしいですよ」
その技術者とは、今日無断欠勤している技術部長たちのことではないか?ピンときた私はK製作所の中でも懇意にしている担当者に電話してみました。すると案の定、私の推測を否定しませんでした。
これでようやく点と点がつながりました。今日無断欠勤している技術部長以下7人は、K製作所にまとめてヘッドハンティングされたに違いありません。おそらく会社から金型を盗んで、その日から使い始めていたのではないでしょうか。実は工場長、製造課長、女性部リーダーの3人はいずれも技術部長の親族なので、この4人が結託して転職する準備を進め、若手有望株の3人を言葉巧みに誘い込んだのだと思われます。
それにしても、モラルも仁義もへったくれもない話です。これまで勤めていた会社に一言の断りもなく、得意先企業に集団で寝返って転職していくとは……。しかも、これまで私たちの会社でやっていた仕事を横取りするつもりなのです。技術部長については、私は前々からその人間性に問題があると考えていたので、この理不尽な展開に驚きはしたものの、数秒後には「あの人物なら大いにあり得ることだ」と妙に納得してしまったことを覚えています。
戸田 拓夫
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
