「牛乳を飲んでいるから大丈夫」は誤解
毎日、多くの骨粗鬆症患者を診察していると、患者から「先生、骨粗鬆症と診断されてから牛乳をたくさん飲むようにしています。牛乳を飲めば骨が強くなって、骨粗鬆症もよくなるのですよね?」という質問をよく受けます。骨粗鬆症を発症していない人でも「自分は牛乳をたくさん飲んでいるから大丈夫」「ヨーグルトが大好きで、乳製品をこまめに摂取しているから骨粗鬆症になるはずはない」などと安易に考えがちです。
確かに牛乳やヨーグルトなどの乳製品には、骨の健康に必要なカルシウムがたくさん含まれています。多くの研究者や医師も「牛乳をたくさん飲むとカルシウムの摂取につながり、骨粗鬆症の予防に効果的である」ということを報告しています。
しかし、カルシウムを多く含む食品を多く取っているから大丈夫という考えは誤りです。乳製品を多く摂取していても、骨粗鬆症になることは珍しくありません。
そもそも「牛乳を飲むと骨が丈夫になる」という説は、1953年発行の「栄養と食糧」で発表された兼松重幸氏の論文が発端です。彼は人体における各種食品中のカルシウムの利用状況を明らかにするため、成人男子4人に4日間、小魚、牛乳、炭酸カルシウム、野菜の惣菜を食べてもらい、血中のカルシウム濃度を調べました。すると、牛乳はほかの食品に比べ、血中のカルシウム濃度を急激に上昇させることが分かりました。
ここから「牛乳のカルシウムは吸収がいい=カルシウムは骨を強くする=積極的に取るべきだ」という構図が出来上がったのです。
しかし残念ながら、牛乳をむやみにたくさん飲んでも骨によい影響はありません。人間の血液中のカルシウム濃度は8.5~10.5㎎/dLと一定に保たれているので、がんばって牛乳を飲んでも、この数値を超えて血中のカルシウム濃度が高くなると、体は拒絶反応を起こして増えすぎたカルシウムを排出しようとしてしまうのです。
このとき、カルシウムだけを排出するならまだよいのですが、ほかのミネラルも一緒に排出してしまいます。マグネシウムや亜鉛、鉄などほかのミネラルもカルシウムと一緒に無駄になってしまうのです。
牛乳を飲む場合、一日にコップ1〜2杯、200〜400cc程度が適量とされています。この範囲で摂取すれば、骨の健康を保つための栄養素をしっかり取り入れることができます。
牛乳をたくさん飲めば骨が強くなり、骨粗鬆症も防げるという考えは誤りなのですが、私は患者さんが「強い骨を作りたい」「骨粗鬆症を予防したい」と思う気持ちは尊重したいと思います。骨がスカスカの状態になってから、「カルシウムが足りない」「コラーゲンが足りない」と慌てても、手遅れの場合もあるからです。
だからこそ、骨がまだ元気で丈夫なうちに予防策を講じておく必要があります。いま、予防に取り組んでいれば、骨粗鬆症対策をまったくしてこなかった人とは、10年後あるいは20年後に確実に差が出ているはずです。
大村 文敏
高円寺整形外科
院長
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