「まだまだ上がる」は本当か?データが示す“インフレ鎮静化”の決定的証拠。カギは「コメ・卵・野菜」価格の安定化【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

景気の予告信号灯としての身近なデータ(2025年8月22日)

「まだまだ上がる」は本当か?データが示す“インフレ鎮静化”の決定的証拠。カギは「コメ・卵・野菜」価格の安定化【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
(※画像はイメージです/PIXTA)

スーパーでため息をつき、「まだまだ物価は高い」と感じる日々。家計への負担は依然として重く、多くの人がそう実感しているでしょう。しかし、内閣府が発表した8月の消費者マインド調査では、潮目の変化を示すデータが現れました。人々の「暮らし向き」への見方は4ヵ月連続で改善し、物価上昇への強烈な懸念も和らぎはじめているようです。ではなぜ、日々の実感とデータにギャップが生まれるのでしょうか。エコノミストの宅森昭吉氏が、この“実感とデータのねじれ”を読み解き、日本経済の今とこれからを分析します。

物価上昇の勢いに一服感?DIは「上昇」から「やや上昇」への見方の変化で低下

25年8月の物価上昇判断DIは84.8と2ヵ月ぶりに低下。ただし、3月以降6ヵ月連続で80台。

 

物価上昇判断DIは、調査開始から22年1月までは60台・70台で安定推移していました。しかし、ロシアがウクライナ侵攻した月の22年2月調査以降、物価上昇判断DIは80台・90台で、物価が上昇するという見方が強い状況が継続しています。

 

22年10月に90.4をつけたあと80台後半の高水準での推移が続き、23年は6月に90.7をつけました。そこから振幅をともないつつ24年9月の80.3まで一旦低下しましたが、反転上昇傾向になり、25年2月に90.2と20ヵ月ぶりの90台を記録しました。

 

25年3月以降8月までは80台で推移しています。4月87.9から、5月87.0、6月85.8と2ヵ月連続低下しましたが、7月は87.4へと3ヵ月ぶりに上昇、8月は84.8へ低下しました。

 

出所:内閣府「消費者マインドアンケート調査」
[図表1]物価上昇判断DI 出所:内閣府「消費者マインドアンケート調査」
※「上昇する」から「低下する」までの5段階の回答を景気ウォッチャー調査と同様にDIで作成した。

 

回答の内訳比率をみると、25年8月は「上昇する」が50.0%で、6月51.8%、7月59.6%に続き、3ヵ月連続の50%台ですが、「上昇する」の割合が9.6ポイント減りました。その一方、「やや上昇する」が9.1ポイント増加したことが、7月から8月にかけて物価上昇判断DIが鈍化した背景です。

 

出所:内閣府
[図表2]消費者マインドアンケート調査(試行):物価見通し(1年後)の集計結果推移 出所:内閣府

 

暮らし向きDIは4ヵ月連続で改善、約8ヵ月ぶりの高水準に

25年8月の暮らし向き判断DIは38.2と4ヵ月連続上昇で、25年2月の35.8以来の水準に。

 

暮らし向き判断DIは、24年10月から25年8月までの11ヵ月間は、逆相関の動きをする物価上昇判断DIが84以上の高水準であったことから、低水準の20台・30台で推移しています。しかし、詳細にみると良い方向への変化がみられます。25年5月は28.0で低水準ですが25.4だった4月から2.6ポイント、3ヵ月ぶりの上昇。6月30.4、7月33.6、8月は38.2と3ヵ月連続上昇で、24年12月の39.0以来の水準になりました。8月の「良くなる」の割合は4.5%で2月の5.4%以来の水準です。

 

出所:内閣府「消費者マインドアンケート調査」
[図表3]暮らし向き判断DI 出所:内閣府「消費者マインドアンケート調査」
※「良くなる」から「悪くなる」までの5段階の回答を景気ウォッチャー調査と同様にDIで作成した。

 

暮らし向きの“足枷”だった物価高懸念が緩和、改善傾向を後押し

物価見通し判断は依然高めなもののやや低下傾向で、暮らし向き判断の改善傾向継続。

 

内閣府「消費者マインドアンケート調査」の暮らし向き判断DIと物価上昇判断DIの相関係数は、16年9月から21年8月までの最初の5年間は0.01と無相関。21年9月から25年8月までの最近の4年間では▲0.677のマイナスで逆相関になっています。

 

24年10月から25年8月までの11ヵ月間は、物価上昇判断DIが84以上の高水準に上昇でした。暮らし向き判断DIは、20台・30台の低水準である状況には変わりはなく、物価見通し判断が暮らし向き判断の足枷になる状況が継続していましたが、25年8月では若干の変化がみられます。物価見通し判断は依然高めなもののやや鈍化傾向で、暮らし向き判断が改善傾向にあります。

 

出所:内閣府
[図表4]消費者マインドアンケート調査(最近4年間) 出所:内閣府
※相関係数:▲0.6768

物価高の“主役”だった食品価格、8月は沈静化の動きが鮮明に

猛暑による高騰から一転、野菜・果物価格は下落し安定基調に

野菜、果実の卸値は7月下旬、直近8月上旬と連続して、ともに前年比マイナスに。

 

25年は、年初では野菜高騰が物価高の主因のひとつでしたが、4月上旬になると青果物卸売市場の野菜・卸値の前年比はマイナスに転じ状況は変化しました。主要青果物卸売市場の卸値の前年比は、5月下旬、6月上旬は野菜、果実ともにマイナスになり、野菜・果実の価格は人々のインフレ懸念を沈静化させる材料になっています。

 

しかし、その後、猛暑の影響が出て、野菜・卸値は6月中旬から7月中旬まで前年比プラスに、果実・卸値は6月下旬から7月中旬まで前年比プラスに戻りました。その後、野菜・卸値、果実・卸値ともに7月下旬~8月上旬は前年比マイナスで落ち着いています。8月の物価上昇判断DIが2ヵ月ぶりに低下した要因のひとつだと思われます。

 

出所:農水省
[図表5]野菜・果実卸値の推移(主要青果物卸売市場) 出所:農水省

 

コメ価格は9週連続3,000円台、高水準ながらもピークは脱する

8月4日~10日のコメ5kgのスーパー平均販売価格が9週連続で3,000円台。前年同期比をみると+43.9%と依然高水準だが、倍の値段だった時期に比べればかなり落ち着く。

 

農林水産省は8月18日、全国のスーパーで8月4日~10日に販売されたコメ5kgの全POSデータ平均での販売価格が前週比+195円と2週ぶりに上昇し、3,737円になったと発表しました。9週連続で3,000円台です。前年同期比をみると+43.9%と依然高水準ですが、コメの値段が前年比ほぼ倍になっていたところからはかなり落ち着いてきました。

 

出所:農水省
[図表6]スーパーでの米の全平均販売価格(全POSデータ) 出所:農水省

 

鶏卵価格、300円台の高値続くもピークからは下落傾向

8月のJA全農たまご・卸売価格東京M基準値は310円/kgで、最近のピーク340円/kgから低下。

 

25年8月のJA全農たまご・卸売価格東京M基準値は、1日~22日までの平均値は310円/kgと、最近の極大値だった5月・6月の340円/kgをピークに、7月の328円/kgに続き2ヵ月連続で低下しています。2月以降7ヵ月連続300円/kg台と高水準ですが、最近の落ち着いた動きも、8月の消費者マインドアンケート調査に通じるところがあるとみられます。

 

出所:JA全能たまご株式会社、総務省
[図表7]鶏卵価格の推移 出所:JA全農たまご株式会社、総務省

 

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

 

 

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

 

金融資産1億円以上の方のための
「本来あるべき資産運用」

>>12/23(火)LIVE配信<<

 

富裕層だけが知っている資産防衛術のトレンドをお届け!
>>カメハメハ倶楽部<<

 

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録