飲食・サービス業が好調…7月の「景気判断指数」3ヵ月連続上昇
7月の「景気ウォッチャー調査」で、現状判断DI(季節調整値)は45.2となり、前月から0.2ポイント上昇しました。3ヵ月連続の上昇です。家計動向関連DIは44.8と前月から0.4ポイント上昇しました。
内訳をみると、飲食関連DIが42.8で前月から0.3ポイント上昇。「7月は毎年恒例の屋上ビアガーデンを開催している。前年よりも値上げをしたが、来客数は1割増えている。消費者は、値上げに関して理解ができている」という甲信越の都市型ホテル・スタッフのコメントがありました。
また、サービス関連DIは46.9で前月から1.3ポイント上昇。東北の旅行代理店・従業員の「海外旅行の相談をする客が増えている。国内でも沖縄や大阪・関西万博といった比較的高額な申し込みをする客が多くなっている」というコメントがありました。
企業動向関連DIは0.1ポイント低下し46.0に。製造業は1.9ポイント上昇しましたが、非製造業は▲1.5ポイントと低下しています。調査時点は7月25日~31日で7月23日(日本時間)の日米関税合意のあとにあたります。「米国の関税問題がひと段落し、若干ではあるが先行きの見通しが立つようになっている」という北陸の一般機械器具製造業・総務担当のコメントがありました。
先行き判断DI(季節調整値)は、前月差1.4ポイント上昇し、47.3に。こちらも3ヵ月連続の上昇です。なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差0.4ポイント上昇の45.5となり、先行き判断DIは前月差0.1ポイント上昇の47.0です。
内閣府も「持ち直しの動きがみられる」と前月から上方修正
7月の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方に関する内閣府の判断は、現状に関しては「景気は、持ち直しの動きがみられる」と、6月の「景気は、このところ回復に弱さがみられる」から上方修正されました。
また、先行きについても、「価格上昇や米国の通商政策の影響を懸念しつつも、持ち直しの動きが続くとみられる」と、6月の「夏のボーナスおよび賃上げへの期待がある一方、引き続き価格上昇や米国の通商政策の影響への懸念がみられる」から上方修正されました。
業種ごとの現状判断DIをみると、6月に50台と好調だったコンビニと家電量販店のうち、家電量販店が分岐点の50を下回り、アイスや飲料などの夏物消費の効果が出ているコンビニの景気判断が50を超えています。
地域別にみると、「沖縄」だけが突出して好調という結果に
地域別にみた7月の現状判断DIでは沖縄だけが56.1と、4ヵ月連続で景気判断の分岐点50超になりました。一方、沖縄の先行き判断DIは62.7と、61.6と24年1月60.1以来の60台になった6月に続き、2ヵ月連続60台です。21年9月以降3年11ヵ月連続50超が続いています。
「今夏は沖縄が涼しく避暑地であるとの報道も多数みられており、大型レジャー施設開業の影響で、さらに注目が集まっていることから9~10月にかけて訪れる人は増えるとみている」という沖縄・その他専門店[書籍]・部長のコメントがありました。
「備蓄米」流通で、物価に対するネガティブな見方も緩和
7月「価格or物価」関連現状判断DIは39.2と6月の40.4から1.2ポイント低下し、2ヵ月ぶりの30台になりました。ただし、7月の現状判断コメント数は237名と3ヵ月連続減少し、今年最少です。
「価格or物価」関連現状判断DIは依然景況感の下振れ要因ですが、コメント数の減少から影響はいくぶん軽微になっているようです。
7月「価格or物価」関連先行き判断DIは41.6で前月から0.7ポイント上昇し、3ヵ月連続40台になりました。コメント数は304名で5ヵ月連続減少、24年11月298名以来の低水準です。「コメ不足が備蓄米の流通により落ち着いてきている。米の価格が安定することによって、消費動向がその他の商品に回り、売上安定につながると予測している」という、九州のスーパー・企画担当のコメントがありました。
トランプ関税の悪影響和らぐ…「関税」関連DIも上昇
トランプ大統領の関税政策に振り回される状況が続いていますが、7月23日(日本時間)の日米関税合意により7月の景気ウォッチャー調査では悪影響がいくぶん和らいだ感じがします。5月まで「関税」関連DIは現状、先行きともに3ヵ月連続30台の低水準でしたが、7月は各々44.7、46.3と6月に続き2ヵ月連続で40台になりました。
コメント数は4月の現状判断104名、先行き判断249名がピークでその後2ヵ月連続減少し、6月は現状判断45名、先行き判断は115名でした。しかし、7月は日米関税合意があったことから、現状判断57名、先行き判断は181名へと増加に転じました。
「インバウンド」は3年半ぶりに両DIが50割れ…“風説”も影響か
4月まで「外国人orインバウンド」関連の現状判断DI、同先行き判断DIとも50超で景況感の押し上げ要因でしたが、5月「外国人orインバウンド」関連の現状判断DIは49.4、同先行き判断DIは50.0。両DIとも景気判断の分岐点を上回ることができなくなっていました。新型コロナウイルスの影響が出ていた22年2月の外国人orインバウンド」関連現状判断DI31.3、同先行き判断DI50.0以来の、極めて異例の事態です。
6月「外国人orインバウンド」関連先行き判断DIは50.8に0.8ポイント上昇し50超に戻ったものの、同現状判断DIは44.2と5.2ポイント低下、2ヵ月連続の40台になりました。
7月は「外国人orインバウンド」関連現状判断DIは43.3と前月から0.9ポイント低下、3ヵ月連続の40台になりました。22年2月の31.3以来の低水準です。7月に地震が起こるとの風説なども影響したようです。先行き判断DIは48.1に、前月から2.7ポイント低下し、23年10月49.9以来の40台になりました。22年4月の46.9以来の低水準です。
「インバウンドは購買動向の変化が顕著で、客単価が大幅に下がっている。購入商品に対する関心もインポートブランド中心から一般商品を含めた商品全般に移っていることも要因である。国内消費者については、高額品や食料品、飲食店の堅調に加え衣料品等は百貨店で扱うブランドが健闘している。ただし、今後の景気については、米国の関税問題、政治動向等を踏まえてどのような変化があるかわからないため、変化の予兆に留意している」という東海の百貨店・企画担当のインバウンド需要などに関するコメントがありました。
「外国人orインバウンド」関連現状判断DIと先行き判断DIがともに50割れになったのは、22年1月以来、3年半ぶりです。目先の動向が気になるところでしょう。
“万博疲れ”危惧…「万博」関連先行きDIは鈍化
7月の「万博」関連現状判断DIは50.9と6月より0.3ポイント高まりましたが、コメント数は27名で、43名で最高だった6月から減少しました。「万博」関連先行き判断DIは50.0で6月から6.0ポイント低下しています。会期終了後が視野に入ってきたこともあり、コメント数は37名で最高だった4月の60名から3ヵ月連続で低下しました。
「大阪・関西万博終了後の客の旅行マインドについては、万博疲れで外出を控える傾向となることが危惧される。実際に、秋以降の旅行の申し込みは停滞気味である」という近畿の旅行代理店・支店長のコメントがありました。
アイス・飲料好調も…「気温」は好材料、「猛暑」は逆風に
「6月以降の気温上昇の影響で、アイスや飲料などの夏物商材の販売量が回復している」という気温に関連する、北海道のコンビニ・エリア担当のコメントがありました。7月で「気温」という表現を使うコメントは、現状判断DIが56.5、先行き判断DIが55.5と景気判断の分岐点50を上回っていることから前向きな判断が多いことがわかります。
一方、「観測史上最短の梅雨明けとなり、猛暑の影響もあり来客数が前年を下回っている。衣料品や雑貨の販売量の伸び悩みが継続しており、お中元ギフトについては想定以上に下回って推移している」という九州の百貨店・経営企画担当のコメントに代表されるように、「猛暑」という表現を使うコメントは、現状判断DIが43.3、先行き判断DIが44.5と景気判断の分岐点50を下回っていることから、厳しい判断が多いことがわかります。
『国宝』『鬼滅』効果で「映画」関連DIは好調
6月調査の調査期間は6月25日~30日で、その直前にトランプ米大統領が日本時間22日午前、米軍がイラン国内3ヵ所の核施設を空爆したと発表。また、トランプ大統領がイスラエルとイランそれぞれが順次戦闘を停止し、日本時間25日午後1時には戦闘が終結するとした停戦合意を日本時間24日発表しました。
中東関連で大きな動きがあったため、6月調査では、中東、イスラエル、イランに関するコメントがにわかに増えました。中東情勢を懸念するコメントが多く、全体のDIに対しマイナス寄与となっていました。6月の「中東」関連DIは、現状が40.6(回答ウォッチャー8名)、先行きが38.2(同34名)でした。
しかし、7月調査は、この地域の懸念が消えたなかでの回答のため、「中東」関連DIでは、現状で回答した景気ウォッチャーは皆無でした。「中東」関連先行き判断DIは25.0で、回答した景気ウォッチャーは2名に過ぎませんでした。
『国宝』や『劇場版「鬼滅の刃」無限城編・第一章・猗窩座再来』といった映画の好調な興行収入や観客動員数が話題になっています。
7月の景気ウォッチャー調査では、「3ヵ月前のゴールデンウィーク前後では、一部映画の公開が例年よりやや遅かったことにより、当ショッピングセンターは好調な推移ではなかった。しかし、現在も映画館が話題の映画の上映効果で大幅に伸長している点に起因し、全館として順調な売上となっているが、アパレルを中心に既存店は厳しい商況が継続している」と九州:その他小売の動向を把握できる者[ショッピングセンター](支配人)のコメントがありました。7月の「映画」関連現状判断DIは75.0です。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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