「食の傾向」を示すデータから、その土地特有の“文化”がみえる
「家計調査」は、GDPの個人消費を算出するときの需要側の基礎統計というマクロの景気動向判断指標としての一面もありますが、ミクロ的経済指標としても身近で興味深いデータの宝庫といえます。
家計調査では年に1度、2人以上世帯のデータを使用して作成した、直近3年間の平均でみる「品目別都道府県庁市及び政令指定都市ランキング」が発表されます。統計的に有効なサンプル数を確保する意味で直近3年間の平均が使われているようです。
政令指定都市では現在、川崎市、相模原市、浜松市、堺市、北九州市の5市が対象になっています。今年は2月14日に2022~2024年の3年間の平均のデータが公表されました。
また、毎年8月ごろに『家計簿からみたファミリーライフ』が発表されています。今年は8月25日に発表され、「食生活から垣間見られる土地柄」の項目に、2022~2024年平均の品目別「年間支出金額」または「年間購入数量」が、全国で上位である食料の購入品目について、それぞれの地域の特徴を踏まえ、一覧表が掲載されています。
一時「みそ」を日本一の量は食べなかった長野市民だが、最近は…
一覧表に記載されている食料の購入品目が10年前と変わらない都市もある一方で、変わっている都市もあります。
長野市をみると、10年前には「みそ」、「調理パン」、「リンゴ」と記されていましたが、今年の記載品目は、「小麦粉」、「えのきだけ」、「リンゴ」となっていて、「みそ」は消えています。昨年公表された2021~2023年平均のデータでも、「みそ」は表から消えていました。
塩分控えめ思考から健康に気をつかう家庭が増えたため、「みそ」の「年間支出金額」、「年間購入数量」はともに第8位でした。
なお、今年公表された2022~2024年平均のデータでは、「みそ」の「年間支出金額」、「年間購入数量」が各々第2位、第1位になりましたが、一覧表に再び掲載されていません。来年どういう結果になるか予断を許さない状況だと思われます。
また、10年前に記されていた「調理パン」は長野市の場合、小麦粉やそば粉などの皮で野沢菜などの野菜や小豆などを包んだ「おやき」が多かったと想像されますが、昨年に続き今年も記されていません。「小麦粉」が入ってきているということは自宅で「おやき」をつくる(?)ことが増えた可能性もあります。
今年の長野市の「調理パン」への「年間支出金額」は第11位で、消費行動が変わってきたことが反映されていることがわかるでしょう。
納豆=水戸、ぎょうざ=宇都宮…10年前の「日本一」のいま
10年前「納豆日本一」の水戸は4位に後退…王座についた「福島」
水戸市では「納豆」が10年前に記載されていましたが、今年は消えています。「納豆」の「年間支出金額」は2012~2014年平均のデータでは、水戸市が第1位でしたが、2022~2024年平均のデータでは、福島市が第1位で、水戸市は盛岡市、秋田市に抜かれ、第4位に後退しているためだと思われます。
「ぎょうざ日本一」は宇都宮・宮崎・浜松が“三つ巴”
「ぎょうざ」の「年間支出金額」に関しては、毎年1年間のデータでどの都市が一番か、町おこしの観点から注目されメディアでも大々的に報じられます。
かつては、宇都宮市と浜松市が第1位を争っていましたが、近年宮崎市が参戦。『家計簿からみたファミリーライフ』では過去3年平均での第1位が記されています。2015年発表の2012~2014年平均のデータでは、宇都宮市が第1位。昨年発表の2021~2023年平均のデータでは第1位は宮崎市でした。今年発表の2022~2024年平均のデータでは浜松市が第1位でした。第1位が激しく入れ替わっていることがわかります。
「中華そば日本一」は山形に軍配
最近では、「ぎょうざ」の他に「中華そば」の第1位が話題になることが増えました。「中華そば」(外食)の「年間支出金額」は2022~2024年平均で山形市が第1位です。山形市では、家計調査結果での「日本一」というブランドを活かして、国内外からの観光誘致に努めています。
お米消費は変わらず「静岡市」が不動の1位
「米」の「年間支出金額」は今年発表の2022~2024年平均のデータで全国第1位は静岡市です。2015年発表の2012~2014年平均のデータでも全国第1位は静岡市でした。
なお、今年の『家計簿からみたファミリーライフ』では、「米」の「月別支出金額」のグラフが掲載されていて、2024年は2022年・2023年の同月と比べ、1月以降支出金額が徐々に大きくなり、特に8月以降、南海トラフ地震臨時情報の発表や台風等を背景とした買い込み需要などの影響で、支出金額が大きくなっていたことが示されています。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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