(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

●8月第2週は自己、海外投資家、事業法人が現物を買い越した一方、個人は1兆円超売り越し。

●海外投資家は先物を1兆円超買い越しており、裁定買い取引を通じ日本株の押し上げに寄与か。

●2023年3月以降の期間でみると事業法人の積極的な買いが相場を支えている様子がうかがえる。

8月第2週は自己、海外投資家、事業法人が現物を買い越した一方、個人は1兆円超売り越し

日本取引所グループは昨日、2025年8月第2週(12日~15日)における投資部門別の日本株売買状況のデータを公表しました。日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)は、この週の15日に、そろって終値ベースで過去最高値を更新していたことから、今回のレポートでは、日本取引所グループのデータをもとに、日経平均とTOPIXの過去最高値更新を主導した投資主体を探ります。

 

まず、現物(東京証券取引所と名古屋証券取引所の売買代金の差額合計)からみていくと、自己(証券会社の自己勘定)、海外投資家、事業法人が、順に約7,400億円、約5,700億円、約1,800億円買い越しており、これらの主体が株価を押し上げたと推測されます。一方、相場の流れに逆らう逆張り志向が強いとされる個人は約1兆1,300億円、公的年金などの売買動向を反映するとされる信託銀行は約2,200億円、それぞれ売り越しとなりました。

海外投資家は先物を1兆円超買い越しており、裁定買い取引を通じ日本株の押し上げに寄与か

次に、先物(日経225先物、日経225mini、日経225マイクロ先物、TOPIX先物、ミニTOPIX先物の売買代金の差額合計)に目を向けると、海外投資家が約1兆1,800億円買い越し、自己が約9,400億円売り越しています。前述の現物の動向を踏まえると、海外投資家による1兆円超の先物の買い越しで、一時的に割高となった先物を証券会社が自己勘定で売り、同時に現物を買う「裁定買い取引」が8月第2週に行われたと考えられます。

 

参考までに、日本取引所グループが公表する裁定取引に関するデータをみると、8月8日から15日まで、裁定買いポジションが1億3,500万株程度、増加しています。なお、海外投資家が先物の売りに転じた場合、裁定買い取引の解消(先物の買い戻しと現物の売り)に伴って、現物株に売り圧力が生じることもあります。今週は日経平均、TOPIXともに売りに押されていることから、これらの取引の影響も、一部にはあるように思われます。

2023年3月以降の期間でみると事業法人の積極的な買いが相場を支えている様子がうかがえる

さて、ここで海外投資家の売買動向について、少し長い期間をとり、アベノミクス相場当時と、東京証券取引所(以下、東証)が資本コストや株価を意識した経営を企業に要請した2023年3月以降を比較してみます。図表1は、海外投資家による現物の売買代金差額累計の推移を示していますが、2023年3月以降の現物買いの勢いは、アベノミクス相場当時ほどではないことが確認されます。

 

(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]海外投資家の現物売買代金差額累計 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

なお、日経平均はアベノミクス相場当時(2012年9月28日~2015年6月5日)11,590円74銭(130.7%)上昇し、2023年3月以降(2023年3月24日~2025年8月15日)15,993円06銭(58.4%)上昇しています。図表2は、事業法人のケースを示したもので、主に自社株買いと思われますが、東証の要請以降、資本コストや株価を意識した経営が企業に浸透し、事業法人の積極的な買いも相場を支えている様子がうかがえます。

 

(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]事業法人の現物売買代金差額累計 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均株価の過去最高値更新を主導した投資主体とは【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。

 

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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