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結婚式はしなくてもよい?
令和の日本では、結婚式を「しなくてもよいこと」ととらえる人が増えました。その背景にはさまざまな社会的および歴史的な要因が絡んでいます。結婚式が果たしてきた役割とその意義が変化してきた過程を振り返ってみると、なぜ現在の状況に至ったのかが見えてきます。
以前は結婚式を「大人の仲間入り」を果たす重要なステップとして、多くの人が当然のように行ってきました。平成初期頃の挙式率を調査したデータでは、結婚したほとんどのカップルが結婚式を挙げていたことが分かります。
南 知恵子氏(横浜市立大学商学部助教授・当時)の論文「ブライダル市場における儀礼と互酬メカニズム」によると、1993年6月〜1994年5月までに結婚したカップルの97%が挙式を、95%が披露宴を行っていたことが明らかになっています(1994年の三和銀行調べ「挙式前後の出納簿」から同氏が独自で計算)。当時は「結婚式は挙げて当然」とされていたのです。
ところが、その後約30年間で、日本では「結婚式を挙げない・挙げなくてもいい」といった考えが徐々に広まっていきました。2023年に発表されたマイナビウエディングの調査によると、結婚式を挙げたカップルの割合は半分以下の45.3%でした。結婚式は「誰もが挙げていた時代」から「選択する時代」へと変わったのです。
これには、まず経済的な理由が考えられます。バブル経済の崩壊以降、日本は低成長期に入りました。
収入の伸び悩みや不安定な雇用状況が続き、これに伴って、結婚式に費用をかけることに対して慎重になるカップルが増えました。住宅や子どもへの投資、将来のための貯蓄など、結婚に伴う現実的な支出への対策を優先するようになったのです。結婚式には多額の費用がかかるため、ほかの大切なことへ予算を充てたいと考えるのは当然です。
また、価値観の変化も考えられます。かつての結婚式は、家族の結びつきを強化するために行う要素が強かったのですが、今では個人の自由な選択が尊重されるようになりました。式を挙げることが必ずしも幸せにつながるわけではないと考える人も増えています。結婚という形自体にも、自分たちらしさを尊重したいカップルが多いのです。
こうした変化の要因となる社会的な背景として、女性の社会進出が大きく影響しています。女性も自立して働き、性別に関係なくキャリアを築くことが当たり前になり、結婚が人生の大きな目標とされることが少なくなりました。結婚に対する考え方が多様になり、どのように生きていくかの決定権が個々人に与えられるようになったのです。
ここ数年においては、コロナ禍が大きく影響しています。パンデミックによって、多くのカップルが結婚式を延期したり規模を縮小したり、中止を余儀なくされることがありました。これを機に、身近な人だけを招くシンプルな結婚式や、オンライン挙式という新しい選択肢も増えました。こうした流れは「結婚式をしなくてもいい」という考え方をさらに後押ししています。
このように、結婚式を挙げる世代のリアルな感覚が「結婚式はしなくてもよいもの」となりつつある事実は、報道されているさまざまな調査データや数字からも明らかになっています。私がウエディング業界で仕事を始めた1980年代とは、まったく状況が異なるのです。
