年金暮らしの親「出て行ってほしいが」…複雑な感情
一方、両親の心中は複雑なようです。「いつまでいるの?」「そろそろ出ていきなさい」と言われることはあっても、強く突き放されることはなかったといいます。
親も年齢を重ね70代に。息子が同居していることで安心できる場面もあったのでしょう。特にネットや家電の困りごとは、Aさんに聞けばすぐに解決。Aさん自身、自分がいて親が助かることを、事あるごとに強調していました。
しかし、そんなAさんも「実家暮らしをやめたくなる」ときが。それは、お盆休みとお正月休み。毎年、姉と弟一家が帰省してくるのです。
家族が集結、小学生の甥っ子のひと言に「いたたまれない」
毎年、夏休みとお正月休みの年2回、家には姉と弟一家が泊りがけで集まり、数日間賑やかになります。Aさんは毎年、自分の部屋にいたりリビングの隅でスマホをいじりながら、できるだけ存在感を消すのが通例でした。
ですが、おととしのお正月にこんなことがありました。小学生の甥っ子が笑顔で発した一言に、場の空気が一瞬止まったのです。
「おじさんって、ずっとこの家にいるの? もう子どもじゃないのに?」
これまで、姉や弟から同様のことを言われても「その分貯金をしている」「同居していることで親を助けられる」と豪語し、気にすることはなかったというAさん。ですが、甥っ子から言われたその言葉は胸に突き刺さったと言います。
その言葉の裏に、自分の姿の客観的な評価があったからでしょう。実際、経済的にはまったく困っていないけれど、生活面での自立は果たせていない自分。それを、子どもの視点で突きつけられたような気持ちになったのです。
