母子ともに「今はなんとかなるが、5年先はわからない」
東京都内の団地で暮らす78歳の田代和子さん(仮名)、50歳になる息子・浩司さん(仮名)とふたり暮らしを続けています。夫には数年前に先立たれ、ふたりきりの家族です。
「もう50歳なんですけど、子ども扱いしちゃうのよね。でも、この先のことを考えると夜眠れない日もあるんです」
浩司さんは大学卒業後、就職氷河期のあおりで正社員の職に恵まれず、契約社員やアルバイトを転々としてきました。現在は週4〜5日ほど、建材倉庫の作業スタッフとして非正規雇用で働いており、月収は12〜13万円程度。ボーナスや退職金制度もなく、厚生年金にも未加入の時期が長かったといいます。
和子さんの年金は、月11万円ほどの国民年金と遺族年金の合算です。そこに浩司さんの収入を足して、月の家計は23万円ほど。
「ぎりぎり食べてはいけるんです。でも、何かあったらアウトですね。病院代も、薬代も……。貯金はほとんど残っていません」
実際、浩司さんの健康状態も万全とはいえず、重たい作業の後には肩や腰の痛みが続くことも。将来的にフルタイムの勤務が難しくなる可能性もあり、母子ともに「今はなんとかなるが、5年先はわからない」という生活です。
和子さんが最も不安に感じているのは、「もし自分が先に動けなくなったら、息子はどうなるのか」ということ。
「私がもし入院でもしたら、その間の生活はどうなるのか。逆に浩司が病気になって働けなくなったら…と考え出すと、頭がぐるぐるしてしまうんです」
行政では「生活保護」や「高齢者支援制度」などの仕組みがありますが、親子同居や資産保有があると受給要件を満たさない場合も多く、現実的には「使える制度がない」と感じる家庭も少なくありません。
また、息子の就労支援や住宅確保給付金、国民年金の追納制度なども存在するものの、「誰に相談すればいいか分からない」という声も多数上がっています。
「生活保護とか、制度があるのは知ってるんです。でも、あの子は“まだ働けるから”と言って聞かないんですよ」
実際に、相談窓口に足を運んでも「ケースバイケースです」と曖昧に返され、具体的な解決策が見えないまま帰宅するケースもあります。
