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増える孤独死
現実に、単独世帯はすでに日本で「最多の世帯類型」だ。2020年の国勢調査によると、単独世帯は2,115万1,000世帯、全体の38.1%を占め、2050年には44.3%(2,330万世帯)に達すると推計されている。これに伴い「孤立死」※も深刻な社会問題となっている。
2024年の国の推計では、孤立死(死後8日以上経過)は2万1,856件、参考値の4日以上は3万1,843件。性別では男性が約79%を占める。
この静かな数字を前に、私はあえて強くいいたい。
「準備のない単身者の最期は、他人に決められてしまう」
警察・自治体・管理会社・金融機関——。本人の意思が示されていなければ、それぞれの組織が持つ定型のフローが発動する。葬儀の形式から部屋の後始末まで、本人の「望む段取り」とは別の線路を走り出すのだ。これは善悪の話ではない。段取りを書き残していないと、段取りは他人の書式に委ねられるという現実だ。
Tさんの件で、私は仕事の進め方を変えた。人は「正しい説明」だけでは動かない。動くのは、面倒が最小化された具体的な段取りに出会ったときだ。価値観を説得するのではなく、段取りの設計に注力する。単身者の自由を尊重し、その自由を守るための準備だけを、一緒に整えることにした。
最もシンプルな終活準備
そのやり方はシンプルだ。終活の相談を受けたら、まず“小さな実績”として3枚のミニシートに記入してもらう。机に置くのは、次の3枚だけ。
1枚目は「緊急連絡カード」。財布と玄関に置くことを前提に、連絡先を2名分、自身の既往歴、合鍵の所在を記す。
2枚目は「10分インベントリ」。銀行・証券、保険、年金、不動産、公共料金・通信、クレジットやキャッシュレス、税やサブスクなど、契約している項目にチェックをつけ、保管場所や支払方法だけをメモする。
3枚目は「もしものメモ」。葬送の希望、連絡してほしい人の優先順位、遺言の有無と保管先、スマホのロック解除方法やIDの保管場所を記す。
専門用語は使わない。まず「今日ここで、ここまで整った」という手触りを感じてもらうことが重要だ。この小さな成功体験があれば、その後の遺言や死後事務委任、任意後見、信託といった法的な手続きへも、空欄を埋める作業としてスムーズに移行できる。
