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母の当面の生活費はなんとかなりそうだが…
相続税の基礎控除は「3,000万円+法定相続人の数×600万円」です。相続人が母と健太さんの2人であるため、今回の預金2,480万円だけが相続財産であれば、課税対象にはならない計算です。
ただし銀行実務では、名義人の死亡が判明すると口座が凍結される場合があります。遺産分割協議が終わるまで原則として自由に引き出すことはできません。2019年の法改正で、遺産分割前でも各相続人が単独で預金を払い戻せる制度ができました。計算式は「相続開始時の口座残高×1/3×相続人の法定相続分」で、かつ金融機関1行につき150万円が上限です。
今回のケースでは、母と子が相続人。子である健太さんの法定相続分は1/2です。普通預金残高が約1,989万円なら理論上の相続税の計算額は約331万円ですが、上限150万円が適用されます。つまり、健太さんは1行につき最大150万円まで単独で払い戻せることになります。この制度を利用することで、葬儀費用や急な支払いに充てることが可能です。
健太さんの懸念の一つであった葬儀費用や母の生活費についての問題は解消されそうです。
なお、国税庁の統計によれば相続税を実際に納める人は全体の1割弱にすぎません。財務省の公表値でも課税割合は約10%程度です。世間のイメージよりも相続税が発生するケースは限られています。
また、総務省の家計調査によると2人以上世帯の平均貯蓄残高は約1,984万円、中央値は約1,189万円です。父世代が2,000万円以上の預金を残すのは、決して珍しいことではありません。
健太さんは「仕送りを僕のために貯めておいてくれた父の愛情は心から嬉しいです。でも、やっぱり父自身の生活のために使ってほしかった。過度な節約なんてしていなければ、もっと長生きしてくれたかもしれないと思うとやりきれません」と複雑な思いを吐露されました。
筆者は「感情と実務を切りわけましょう。まず資産の全体像を確定し、次に当座資金を確保し、最後に遺産分割の方針を固める。この順番が家族を守ります」と助言しました。
