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穏やかな老後を迎えたはずが…
兵庫県在住の中村一夫さん(仮名/66歳)と妻の佳代さん(仮名/64歳)は、ごく一般的な60代夫婦です。一夫さんは地方銀行に勤め、役職定年後も再雇用で働き続け、昨年ついに完全退職。退職金はおよそ2,000万円、公的年金と企業年金を合わせて月22万円ほどの年金収入があり、住宅ローンも完済済み。子どもはすでに独立し、家計にはゆとりがあります。
「これからは、毎月小旅行にでも行こうね」
「あなたが退職するのを、ずっと待ってたのよ」
そう語り合っていた2人は、平日の混まない時間帯に夫はシニア割を使ってお得に映画館へ行き、近くの温泉へ泊まりがけで出かけるなど、セカンドライフを謳歌していました。そんな矢先、思いもよらぬ夫のひと言が、佳代さんの怒りに火をつけます。
「なあ佳代、俺、やっぱり起業しようかなと思ってる」
その瞬間、佳代さんの手が止まりました。
「……起業? なにを?」
「この前、大学時代の友人がいってたんだよ。いまなら中高年向けのスポーツジムに投資するのがいいって。フランチャイズ形式で初期費用は800万くらいでいけるってさ」
「……は?」
佳代さんの声には不安と不満が入り混じっていました。
“温厚な妻”の怒りの理由
佳代さんはもともと物静かで、家計管理もきっちり行う、どちらかといえば堅実な性格です。だからこそ、一夫さんも安心して仕事に専念できたのだと自負しています。
「老後は安定第一」「贅沢しなければ一生お金に困らない」それが佳代さんのポリシーでした。
「あなたね、退職金を事業に突っ込むって、どういう神経してるの? 起業なんて、軌道に乗らなかったら一瞬でお金が消えるのよ?」
「でも俺、まだ完全に家でのんびりするって年でもないし……。老け込む前に、なにか挑戦してみたくて」
「挑戦は大いに結構。でも、なぜ私の知らないところで話を進めてるの?」
たしかに、話の内容からして、すでに一夫さんの中ではかなり構想が進んでいる様子でした。起業相談の資料、業者のパンフレット……。すでに佳代さんの知らないところで何度もやりとりしていたことが伺えます。
佳代さんの怒りの本質は、「お金の使い方」よりも「信頼の欠如」にありました。
