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「人生最後の引っ越し」のはずだった
「空気はきれいだし、物価も安い。何より、のんびりとした時間が流れている」
そんな理想を胸に地方移住を決めた60代夫婦。しかし、実際に暮らしてみて気づいたのは、“夢”とは程遠い現実でした。
定年退職後の新生活として、静かな山間の町への移住を決めたのは、佐野義一さん(仮名・67歳)と妻の晴美さん(仮名・65歳)。2人は長年、神奈川県内の住宅地に住み続けてきましたが、「自然の中で静かに暮らしたい」と考えるようになり、子どもたちの独立を機に、山間部にある中古の平屋を購入しました。
「ちょうどリフォーム済みの物件が出たんです。家庭菜園もできるし、ここなら第二の人生が送れるって」
そう語る義一さんは、夫婦で過ごす穏やかな日々を思い描いていました。
ところが、移住して間もなく、その理想は音を立てて崩れていきました。
最初に戸惑ったのは、「濃すぎるご近所付き合い」でした。週に何度も差し入れが届き、畑の手伝いへの参加を求められる日々。断れば「冷たい人」と陰で噂され、参加すれば体力的にしんどい。
「正直、どちらを選んでも疲れるんです。ここではみんな一緒が正義。干渉されない暮らしに慣れていた私たちには、それが想像以上に苦痛でした」
と、晴美さんは振り返ります。
交通の便の悪さも大きな誤算でした。バスは1日に数本、最寄りのスーパーまでは車で30分。病院は隣町にしかなく、義一さんが腰を痛めた際には、通院がままならず不安が募りました。
「若い頃なら“ちょっとした不便”で済んだかもしれません。でも、年を取ると想像以上にこたえる。通院や買い物のハードルが、こんなにも高くなるとは思いませんでした」
と語る義一さん。
もうひとつ、想定外だったのは「生活費」です。
「土地が安いから、生活も安いと思っていたけれど、ガソリン代や車の維持費、灯油代などがかさみ、意外と出費が多い。野菜はもらえるけど、それ以外は高くつくんです」
晴美さんはそう苦笑します。
たとえば、冬場の暖房費。都市ガスが通っていない地域では灯油暖房が主流で、冬になると月1万円以上の灯油代がかかることも珍しくありません。
