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年金月8万円だった父が遺した〈驚きの資産〉
今年初めに父を見送った後、週末ごとに少しずつ実家の片づけを進めていた由紀さん(仮名/60歳)。葬儀も落ち着き、押し入れの中の古い段ボール箱に手を伸ばしたとき、思わぬものを見つけます。
中に入っていたのは、何十通もの茶封筒でした。それぞれに「緊急用」「娘へのお祝い」「(自分の)葬儀費用」などと書かれており、中には現金が──。
「まさかと思って数えてみたら、全部で300万円以上。言葉が出ませんでした」
由紀さんの父・俊夫さん(仮名/享年88歳)は、長年自営業を営んでおり、厚生年金の加入期間が短かったため、老後は国民年金のみを受給していました。受給額は月約8万円。日頃から「年金だけでは足りない月もある」と話していたそうです。
由紀さんをはじめ家族は、そんなに大きな貯金があるとは思ってもみませんでした。
俊夫さんは、家族に援助を求めることもなく、質素な暮らしを貫いていました。古い家電を使い続け、自炊を欠かさず、服も何年も同じものを着ていたといいます。
「将来必要になるであろう用途」ごとに細かく分けて保管されていた封筒は、由紀さんたちにとって、かなり意外なものでした。
「病院代・予備」
「娘の引っ越し祝い」
「法事・香典用」
「冬の灯油代」
そこには、俊夫さんの几帳面な性格と、家族への深い配慮が見てとれました。
俊夫さんのように「手元で現金を管理する」というスタイルは、昭和世代を中心に根強く見られます。
銀行預金や投資といった見える資産とは異なり、俊夫さんは「必要なときにすぐ使える安心感」を大切にしていたのかもしれません。
2019年には「老後2,000万円問題」が話題になり、多くの人が将来の生活に不安を感じるようになりました。年金だけでは生活がまかなえないという指摘に、不安を覚えた方も少なくないでしょう。
しかし俊夫さんは、自分にとって必要な金額を把握し、使う目的を明確にしてコツコツ貯めていたのです。「必要な分を、必要なタイミングで使えるように」備えるという姿勢は、理想的な資産形成の一つといえるでしょう。
