(※写真はイメージです/PIXTA)

親と同居することで生活費を抑えられると考える人は少なくありません。しかし、実際には光熱費や食費の増加、家計の負担分担の曖昧さから、親の老後資金に無意識に依存してしまうケースがあります。こうした「隠れ依存」は、将来の生活設計や家族関係を大きく揺るがす可能性があります。

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「両親も特に何も言わなかったので、つい…」

「この家に戻れば、もうお金の心配なんてしなくていいと思っていました」

 

神奈川県在住の大塚美咲さん(仮名・49歳)は、2年前に実家へ戻りました。きっかけは、長年勤めていた会社を早期退職し、次の仕事がなかなか見つからなかったことです。都内での一人暮らしは家賃や生活費の負担が大きく、実家に戻れば出費を大幅に減らせると考えていました。

 

実家には70代後半の両親が暮らしており、父の年金は月22万円。加えて、貯蓄は2,000万円以上あると聞かされていました。

 

「両親は十分な蓄えがあると思っていたので、私がパート収入で家に少し入れれば、それでやっていけると思っていました」

 

しかし同居を始めると、食費や光熱費はすぐに倍近くに跳ね上がりました。特に電気代は、昼間も家にいる美咲さんの生活スタイルで大きく増加。さらに、外食やネットショッピングなど、自分のための出費も少しずつ増えていきました。

 

最初は自分の貯金から生活費を補っていましたが、半年もすると底が見え始め、気づけば両親の口座から日常的にお金を引き出すようになっていました。

 

生活費の内訳を見てみると——

 

食費:同居前は月5万円程度だったが、外食や惣菜購入も増え、月9万円に

 

光熱費:電気・ガス・水道合わせて月1.5万円→月3万円超に

 

通信費:自分用のスマホ代を親の口座から引き落としに

 

交際・娯楽費:友人とのランチや趣味のネット通販に月3〜4万円

 

「一緒に暮らしてるんだからいいよね、という甘えがありました。両親も特に何も言わなかったので、つい…」

 

結果、2年で両親の貯蓄は400万円以上減少。予定していた老後旅行や住宅の修繕計画も延期せざるを得なくなったと言います。

 

心理的には、美咲さんの中に「親は子を助けてくれるもの」という暗黙の前提がありました。一方で両親も「娘は苦労させたくない」という気持ちが強く、お金の使い方に踏み込んで注意することはありませんでした。

 

「親子だから言わなくてもわかる」という思い込みは、実際にはすれ違いを生みます。両親が本当に望んでいるのは援助ではなく、自立だった可能性もありますが、お互いに本音を話す機会を持たないまま時間が過ぎていきました。

 

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