(※写真はイメージです/PIXTA)

コメ政策を大きく転換した日本政府。背景には米国の圧力と国内の供給不足がある。米国産米の輸入増加の要求は「最小アクセス枠」を活用し、輸入の上限を変えず増産重視へと舵を切ったが、農家の保護や輸出競争力強化などまだ課題は多い。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

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米国産米が増加?…日本のコメ政策が迎える「転機」

米国からの圧力と国内の事情を背景に、日本のコメ政策は大きな転機を迎えている。トランプ米大統領は日本のコメ輸入姿勢に不満を示し、「日本は米国産米を十分に受け入れていないが、深刻なコメ不足に陥っている」と自身のソーシャルメディアで発信。これに対し林芳正官房長官は「農業を犠牲にすることは考えていない」と応じ、関係閣僚も農家の立場を守る姿勢を強調した。

 

交渉の結果、日米は最小アクセス枠(MA枠)の範囲内で米国産米の輸入割合を引き上げることで合意。現在のMA枠(年間約77万トン、玄米換算)の上限自体は変更されないものの、この枠内での米国産米の調達量が増える見通しだ。財務省や農林水産省は、この輸入米を主食用には使わず、味噌などの加工用に活用する予定であり、「地元農家への影響はない」と説明している。

 

コメ問題に詳しいニッセイ基礎研究所の小前田大介氏は、「MA枠内で収めた今回の交渉結果は、価格面から日本のコメ農家を守る意味で一定の効果が期待できる」と評価する。

日本政府、増産重視の方向へ政策転換

一方、国内政策では長年続いた「減反政策」が2018年度に正式に廃止されたものの、生産量の伸びは限定的だった。さらに2024年に起きた米不足や価格高騰(「令和の米騒動」)は、猛暑やインバウンド需要の増加といった外的要因に加え、生産制御政策が供給逼迫を招いたとの指摘もある。

 

こうした背景を受けて、日本政府は農地の集約や遊休農地の活用促進など、増産重視の方向へ政策転換を進めている。

 

小前田氏は「政策の詳細がまだ確認できないため現時点での評価は難しいが、需給予想を見直し、これまでのコメ政策の誤りを認めて増産を全面的に打ち出したことは評価できる」と述べる。そのうえで「増産を後押しするには価格補償や中山間地の小規模農家への支援など、きめ細かな施策が不可欠だ。輸出拡大に向けても国としての後押しが求められる。増産には時間がかかるため、政府にはスピード感ある政策決定を期待したい」と指摘している。

 

こうした政策転換は、日本経済にも波及効果をもたらす可能性がある。小前田氏は「将来的に増産が実現すれば、コメの小売価格低下につながり、コメによって押し上げられた消費者物価の低下に寄与するだろう」と見通す。今後の政府の動向を注視したい。

 

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

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