ミスや不正を指摘された場合のリスク
税務調査によってミスや不正が発覚した場合、状況に応じて以下のようなリスクが生じます。
計上漏れなど意図的ではない過少申告となっていた場合
売上の一部計上漏れや経費の記載ミスなどが原因で本来納めるべき納税額が不足していた場合、修正申告が必要となります。追徴本税額に加え、過少申告加算税(令和6年度で最大25%)と延滞税(利息相当)が課されます。
無申告だった場合
一般的な税務調査では、過去3年分の申告内容について調査が行われます。過去3年分の調査を行い、なにかしらミスが発覚した場合には、過去5年分にまで遡って調査をすることもあります。しかし、無申告が発覚すると、過去3年分ではなく原則、過去5年分が調査対象になります。
つまり、税務調査では過去3年分の所得の状況だけを調べられるわけではないのです。無申告の場合には通常、過去5年分の所得状況を調べられることになるため、結果的に税務調査によって発覚する申告逃れによる税額は、過去5年間分の税額になるというわけです。
無申告加算税が課せられる
確定申告が必要であったにもかかわらず、確定申告をしていなかった場合には、本来納めるべき税金の納税を求められるだけでなく、ペナルティとして無申告加算税(令和6年度で最大40%)の納税も求められます。
無申告加算税の税率は原則、税額が50万円以下の部分については15%、税額が50万円を超え300万円以下の部分については20%、300万円を超える部分については30%となっています。
例えば、税務調査によって、ある1年間分の納めるべき所得税の額が1,000万円に上ったと仮定します。
この場合を例に、無申告加算税の税額を計算すると以下のようになります。
(本税が50万円までの部分)
50万円×15%=7万5,000円
(本税が50万円超300万円以下の部分)
250万円×20%=50万円
(本税が300万円超の部分)
700万円×30%=210万円
(無申告加算税額の合計)
7万5,000円+50万円+210万円=267万5,000円
この例では、正しく確定申告を行い、納税していた場合の税負担は1,000万円であったところ、無申告状態であったために267万5,000円も多く納税をしなければならなくなるのです。さらに、後述する延滞税の納税も求められるため、合計の追徴税額はより大きな金額となります。
延滞税が課せられる
無申告加算税は、確定申告をしなかったことに対するペナルティですが、延滞税は納税が遅れたことに対する利息的な性格をもつ附帯税です。令和4年1月1日から令和7年12月31日までの延滞税の税率は、以下のように定められています。
・納期限の翌日から納付日が2ヵ月を経過する日まで:年利2.4%
・納期限の翌日から納付日が2ヵ月を経過して以降:年利8.7%
延滞税は、本来納めるべき本税額の納付が完了するまで1日単位で賦課され続けます。過去5年間無申告であった場合、課される延滞税の額も高額になるでしょう。
意図的な不正があった場合
確定申告をする必要があることをわかっていながら確定申告をせず、多額の所得を隠蔽したり、所得がないように仮装していたりした場合などは、無申告加算税に代えてより税率の重い重加算税が課されます。無申告加算税に代えて重加算税が適用される場合、その税率は最大で50%(令和6年度)になります。
先ほどの例のように無申告で1,000万円の納税が不足していた場合、最大税率を適用されて重加算税が課されると、納税額は1,500万円に膨れ上がります。延滞税も除算期間が認められず、通常よりも延滞税の計算期間が非常に長くなるため、すべてを合計すると膨大な税額が課されることになります。
脱税の罪で起訴される可能性もある
納税の必要性を理解していたにもかかわらず、仮装・隠蔽などの悪質な行為が見られ、多額の申告納税逃れを行っており、脱税行為と認定された場合には、重加算税が課されるだけでなく、所得税法違反や法人税法違反などとして検察庁に告発される可能性があり、脱税の罪で起訴された場合には罰金刑や懲役刑などの刑事罰が科されることもあります。
裁判によって脱税の罪で有罪判決が下された場合、重加算税や延滞税の支払いといったペナルティだけでなく、刑事罰も科せられる可能性があるのです。脱税の場合、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
現金商売の業種は特に注意が必要
バーは、税務調査の対象に選ばれやすい業種です。なぜなら、令和5事務年度において、最も法人税の不正発覚割合が高かった業種がバーだからです。バーに限らず、現金で売上を受け取ることの多い飲食業は、不正や計上漏れなどが起きやすい業種として知られています。
税務調査では、不正行為や経理ミスを指摘し、正しい申告を促すことが目的です。そのため、申告漏れや経理ミスの多いバーなどの飲食店は、税務調査の対象として選ばれやすいのです。
バーなどの飲食店に税務調査が入る場合、事前に内偵調査が行われている可能性や、事前通知なく税務調査が行われる場合もあります。急に税務調査が実施されても困ることがないよう、普段からしっかり証拠書類等を保存して帳簿付けを行い、、正しい申告を行うようにしましょう。
松本 崇宏
税理士法人松本 代表税理士
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。
代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本
税務調査対応専門チームがある税理士法人として現在全国6ヵ所(渋谷、錦糸町、新宿、横浜、柏、大阪)にオフィスを構え、“成功報酬型”の税務調査サポートを提供する税理士事務所では国内No.1の規模を誇る。国税局等に勤めていた、いわゆる「国税OB」が現在14名常駐。税務調査相談・対応実績は累計5,000件以上で専門性・経験則・折衝力を有する。どの業種より税務調査が厳しいといわれる風俗業界の税務に10年以上特化しながら、あらゆる業種の税務調査に対応し、追徴税額ゼロ円の実績多数。
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