バーや飲食店に税務調査が入る際の注意点
バーや飲食店の税務調査には、他業種には見られない特有の特徴があります。
まるで『マルサの女』の世界…事前に「内偵調査」が行われるケースがある
国税局や税務署は、税務調査前に調査官が客を装って来店する「内偵調査」を行うことがあります。店の広さや客席数、客単価、客の入りなどをチェックし、申告内容と実際の売上に乖離がないかを確認するためです。
調査官が実際に飲食した場合、そのレシートや領収書を保管し、後日税務調査時に納税者が保管している申告に係る証拠書類と照合することで、売上が正確に計上されているかを確認します。
事前通知の通知事項について
国税局や税務署による税務調査が行われる場合、税務調査を実施する前に税務調査を行う旨を納税者に通知しなければなりません。国税通則法第74条の9では、税務調査を行う際には、あらかじめ次の事項を通知するものとするとしています。
また、この通知事項は事前通知あり・なしに関わらず、調査手続きとして法的に行わなければなりません。
■通知事項の内容
- 税務調査の開始日時
- 調査を行う場所
- 調査の目的
- 実地調査であること
- 調査の対象となる税目
- 調査の対象となる期間
- 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
- その他調査の適性かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項
通知事項の通知方法について
通常、事前通知を行う場合は、電話で行われますが、ほかにも直接納税地に臨場して口頭で通知したり、臨場時に閉戸不在であれば、不在文書と言われる臨場した目的を記した書面に通知事項が記載されている場合もあります。
国税調査官等が注意しなければならないのは、前述した通知事項は、下記で説明する事前通知なしで調査を実施する場合であっても、調査を開始する前に必ず通知しなければならないということです。
もし、事前通知なしの調査で国税調査官等がこの通知事項を通知せずに調査を開始する場合には、重大な調査手続き違反となる可能性があります。
事前通知なしで調査が実施されることがある
通常の税務調査では、事前通知が義務付けられています(国税通則法第74条の9)。しかし、同法の第74条の10では、事前通知を行うことによって正確な税務調査が困難になる恐れがある場合には、事前通知が不要であることも記載されています。
つまり、事前に連絡をすることで帳簿や伝票を破棄してしまうような恐れがある場合や、改ざんを行う恐れがある場合などは、事前通知をする必要はないということです。
特に、現金での取引が中心となるバーなどの飲食店の場合、税務調査の事前通知を行うことで、税務調査を実施するまでの間に伝票を廃棄したり、タイムカードを改ざんしたりといった行為が行われる可能性が高いと考えられています。
そのため、事前通知なしで税務調査が行われる場合もあるのです。ただし、事前通知なしの場合であっても前述のとおり、国税調査官等は調査開始前に調査通知事項を伝えなければなりません。
事前通知なしの調査により調査官が来訪した場合の対応
事前通知がなく税務調査が始まった場合でも、その場で必ず応じる必要はありません。営業への支障や税理士への相談を理由に、日程変更を申し出ることが可能です。
バーや飲食店の営業に支障が出る場合や税理士に相談したい場合などは、別日程で調査を受けたい旨を説明し、日程調整を願い出るようにしましょう。
顧問税理士がいる場合にはその税理士に連絡し、税務調査の対応を依頼します。
また、顧問税理士がいない場合でも、税務調査の対応だけをスポットで引き受ける税理士に立ち会いを依頼することをおすすめします。
