ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【基本編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
「今は太陽光が儲かる時代だよ」…きっかけは友人の言葉
「年金にプラスして、毎月10万円くらいの安定収入になるはずだったんです」
65歳の中村清さん(仮名)は、そう振り返ります。大手企業を定年退職し、受け取った退職金は約3,000万円。そのうち半分以上を、友人のすすめで太陽光発電設備の購入に充てました。
契約当初は、国の固定価格買取制度(FIT)により、20年間は一定額で電力会社が買い取るという説明を受け、「元本回収も十分可能」とのシミュレーションも提示されていました。
しかし、わずか数年で、彼の見込みは大きく崩れることになります。
定年後の生活に漠然とした不安を抱えていた中村さん。そんなある日、学生時代からの友人と久しぶりに顔を合わせました。お酒も進む中、友人は「時代は太陽光だ」と切り出し、国の制度や安定収入の魅力を熱心に語り始めたのです。
「今は太陽光が儲かる時代だよ。国が20年間、固定価格で買い取ってくれるから損はしない」
提示された資料には、年間発電量や売電単価、維持費などが細かく書かれ、年間の売電収入は180万円前後と試算されていました。初期投資は設備費用+設置費用で約1,800万円。これなら10年以内に元が取れ、残りの期間は利益になる──そう信じた中村さんは、迷わず契約にサインしました。
しかし、設置から2年目あたりから異変が起きます。発電量が契約時の見込みを大きく下回る月が続き、売電収入も予想より2〜3割低くなりました。
「設置場所が山間部で、季節によって日照時間が短くなることを考慮していなかったんです。積雪時期はほぼ発電できず、パネルの雪下ろし費用までかかりました」
さらに、パワーコンディショナーやパネルの故障による修理費、保険料、土地の固定資産税など、維持管理費も膨らみました。
結果として、実際の年間売電収入は120万円前後。そこから維持費を引くと、手元に残るのは60万円程度でした。
加えて、中村さんを追い詰めたのが制度変更の影響です。
FIT制度は年々買い取り価格が下がっており、今後は「FIT期間終了後の売電単価」が大幅に下がることが予想されています。契約時に想定していた20年間の安定収入は、必ずしも保証されない状況になってきたのです。
環境省や経済産業省の資料でも、太陽光発電の投資には「天候や設置環境による発電量変動」「機器故障・災害リスク」「制度変更リスク」が明記されています。
中村さんは友人に相談しましたが、「そんなことになるとは思わなかった」と返され、具体的な解決策は得られませんでした。
「友人を責める気持ちもあるけど、最終的に決断したのは自分。退職金をこんな形で減らしてしまい、本当に悔しいです」
