(※写真はイメージです/PIXTA)

「自分は事業で成功したから」「十分な資産を築いたから」――。現役時代に高収入を得てきた個人事業主や経営者ほど、老後の生活に自信を持っているかもしれません。しかし、その自信が、実は深刻な老後破産への落とし穴となるケースが後を絶ちません。順風満帆にみえた人生が、一つの出来事をきっかけに、坂道を転がり落ちるように崩れてしまうことも。FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が、高田夫妻(仮名)の事例とともに、特に個人事業主が陥りやすい老後の落とし穴について解説します。

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家を手放したあと

年金を未納にしてきたため、年金収入がありません。持ち家を手放したあとは家賃8万円のアパートに引っ越したものの、生活費が足りず、クレジットカードのリボ払いに依存。気がつけば家賃は2年分、約200万円を滞納していました。

 

大家からの督促を無視し続け、ついに呼び出された夫妻は、土下座して謝罪しました。そして、税務調査で資産の大半を失った事情を正直に打ち明けます。大家が「しかし、年金もあるでしょうに……」と問いかけると、夫妻は力なく答えました。

 

「いえ……私たちには、年金ないので」

 

大家は手前勝手な話だとも思いましたが、困窮した彼らの様子を見放すことができず、温情で即時退去をしないでいます。高田夫妻のかつての繁栄とは真逆の「老後破産」状態に陥っています。

破綻の本質は“無知”と“無計画”

高田夫妻の破綻を招いた原因は、直接的には所得隠しです。当然、これはやってはならないことですが、根本的な問題点は“家計管理の甘さ”と“制度への無理解”にあります。

 

まず、脱税などせずとも税金はしっかり認められる方法を使って上手に抑えることもできます。税理士等の専門家に相談しながら認められている手段で余計な税負担も抑えていれば、重加算税や延滞を回避し6,000万円ものお金を失わずに済んだといえるでしょう。

 

また、年金の未納問題について。年金制度を単純な損得勘定で語るのは適切ではありません。とはいえ、「どうせ損をする」という誤解が未納の背景にあるのも事実です。そこで、あえてその計算をしてみると、国民年金は現行の制度であっても平均寿命まで生きれば十分に元が取れる(=得をする)計算となっているのです。

 

そして、老後もある程度の収入がありながら、2億円もあったはずの資産をほとんど食いつぶしてしまった家計管理に大きな問題があります。

 

「うちは資産があるから大丈夫」

「仕事をすれば収入は得られる」

 

収入が高くても、豊富な金融資産を持っていても、支出の管理ができていないと「お金がない」という状態になってしまうこともありますので、「自分に合った適正な支出額」の範囲を知り、守っていきましょう。

 

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