貿易統計25年6月…トランプ関税下でも米国向け輸出数量は横ばい圏で踏みとどまり、4~6月期の外需寄与度はプラスに

貿易統計25年6月…トランプ関税下でも米国向け輸出数量は横ばい圏で踏みとどまり、4~6月期の外需寄与度はプラスに
(写真はイメージです/PIXTA)

7月17日、財務省が公表した貿易統計によると、6月の貿易収支は1,531億円の黒字となりました。輸出が2ヵ月連続で減少した一方で輸入が増加に転じたことで、収支は前年に比べ683億円の悪化という結果に。それぞれ内訳はどのようになっているでしょうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏が、6月の貿易収支について詳しく解説します。

ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【基本編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)

『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)

『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

米国向け輸出数量は横ばい圏で踏みとどまる

25年6月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲1.6%(5月:同▲1.4%)、EU向けが前年比7.0%(5月:同6.3%)、アジア向けが前年比4.4%(5月:同1.5%)、うち中国向けが前年比▲5.8%(5月:同▲7.8%)となった。

 

出所:財務省「貿易統計」
[図表6]地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 出所:財務省「貿易統計」

 

25年4-6月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比0.4%(1-3月期:同2.2%)、EU向けが前期比3.7%(1-3月期:同▲2.0%)、アジア向けが前期比▲0.9%(1-3月期:同0.1%)、うち中国向けが前期比▲3.0%(1-3月期:同0.2%)、全体では前期比0.8%(1-3月期:同▲0.7%)となった。

 

アジア向けは弱い動きとなったが、EU向けは持ち直し、米国向けは関税が引き上げられた中でも数量ベースでは横ばい圏で踏みとどまった。

 

米国向けの輸出は数量面では関税引き上げの影響が顕著に表れていない。一方、米国向けの輸出価格指数は3月の前年比8.4%から4月に同▲3.0%とマイナスに転じた後、5月が同▲9.8%、6月が同▲9.9%と低下幅が大きく拡大した。輸出価格低下の一因は円高だが、為替レートの変動以上に輸出価格指数は低下している。

 

25%の追加関税が課せられた米国向け自動車輸出は4月に前年比▲4.8%と4ヵ月ぶりの減少となった後、5月が同▲24.7%、6月が同▲26.7%と減少幅が大きく拡大した。数量は横ばい圏の動きとなっている(4月:同11.8%→5月:同▲3.9%→6月:同3.4%)が、輸出価格が4月の前年比▲14.8%から5月が同▲21.7%、6月が同▲29.1%と低下幅が拡大したことが輸出金額の大幅減少につながっている。

 

貿易統計の輸出価格指数は円ベースのため、為替変動の影響が含まれるが、日本銀行の「企業物価指数」では、契約通貨ベースと円ベースの輸出物価指数が公表されている。北米向け乗用車の輸出物価指数を契約通貨ベースでみると、3月の前年比▲1.5%から4月が同▲8.1%、5月が同▲18.9%、6月が同▲19.4%とマイナス幅が急拡大している。

 

出所:財務省「貿易統計」
[図表7]米国向け自動車輸出の推移 出所:財務省「貿易統計」

 

出所:日本銀行「企業物価指数」
[図表8]輸出物価(北米向け乗用車)の推移 出所:日本銀行「企業物価指数」

 

関税引き上げによる輸出への影響は、価格競争力低下に伴う数量の減少と数量の落ち込みを緩和するための輸出企業の価格引き下げに分けられる。米国向け自動車輸出は価格の大幅な引き下げによって数量ベースでは横ばい圏にとどまっている。米国に輸出する自動車は日本の海外子会社が米国で販売しているケースが多い。日本の親会社が米国でのシェアを維持するために、関税引き上げ分のコストを負担していることが推察される。

 

輸出価格の大幅な引き下げによって輸出数量の落ち込みは緩和されているが、その裏では国内の企業収益が大きく悪化していることには注意が必要だ。

 

注:()内は前回調査からの修正率(幅) 出所:日本銀行「全国企業短期経済観測調査(2025年6月)」
[図表9]日銀短観の売上・収益計画 注:()内は前回調査からの修正率(幅)
出所:日本銀行「全国企業短期経済観測調査(2025年6月)」

 

実際、日銀短観25年6月調査では、自動車の25年度の経常利益計画が前回調査から▲24.9%の大幅下方修正となり、前年度比▲23.4%の大幅減益計画となった。輸出の伸びが若干下方修正されたことに加え、売上高経常利益率が前回調査から▲3.05ポイントの大幅悪化となったことが経常利益を大きく下押しした。輸出価格の引き下げが利益率の悪化をもたらしている。

4-6月期の外需寄与度は前期比0.2%程度のプラスに

6月までの貿易統計と5月までの国際収支統計の結果を踏まえて、25年4-6月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比2%台半ばの増加、輸入が前期比1%台後半の増加となった。

 

この結果、4-6月期の外需寄与度は前期比0.2%(1-3月期:同▲0.8%)と2四半期ぶりのプラスとなることが予想される。

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年7月17日に公開したレポートを転載したものです。

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録