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銀行から提案された“リスクの少ない投資”の正体
元会社員の田中明さん(仮名/68歳)は、定年退職時にまとまった退職金を手にしました。「老後の生活費は年金で足りるとしても、多少は運用したい」と思っていた矢先、長年利用していた銀行の担当者から連絡が。
「リスクの少ない商品があるんです。半年で2.5%の利回りが期待できますよ」
勧められたのは、1,000万円を半年預ければ25万円が上乗せされて戻ってくるという商品でした。大手銀行の担当者が「大丈夫ですよ」と繰り返す姿に安心感を覚えた田中さんは、特に深く調べることもなく契約しました。
結果は、確かにそのとおり。半年後には、25万円の利益が加算されて返ってきたのです。
「銀行がいうことに間違いはないな」
そう思った田中さんに、再び銀行員が新しい提案を持ってきます。
「今度は1年間で5%の利回りです。同じタイプの商品で、2,000万円から始めてみませんか?」
経験上、悪くはありませんでした。加えて“顔なじみの担当者”の言葉で、田中さんは2,000万円を投資することに。しかしその商品こそが、「仕組債(しくみさい)」と呼ばれる、高いリスクを内包した複雑な金融商品だったのです。
2,000万円が400万円に?
資産運用が思いのほか簡単にうまくいくと、味を占めた田中さんは投資デビュー後、老後資金に余裕を感じ、妻や友人、孫とともにあちこち旅をして過ごしました。充実したセカンドライフを送れるのも、お金に余裕があるからだと穏やかな心持ちです。
しかし2,000万円の投資から1年後、田中さんのもとに届いたのは、約束された2,100万円ではなく、時価400万円分の株式でした。投資した2,000万円は、1年間で“80%以上の価値を失った”ことになります。
「仕組債」はなにが恐ろしいのか?
仕組債とは、あらかじめ決められた条件に応じて元本や利息の支払い方法が変動する金融商品です。通常の債券と異なり、株価指数や個別株、為替レートなどを参照しており、条件次第で元本割れのリスクが高まります。
多くの仕組債では、「ノックイン価格」と呼ばれる基準値が設定されており、参照する株価や指数がこの水準を下回ると、元本の一部または全部が「株式」で償還される場合があります。このため、想定以上の損失を被る可能性がある点に注意が必要です。
仕組債のリスクとリターンの特徴は主に下記3つ。
・利益は限定的:受け取れる利益は、事前に決まっている利息収入が中心で、それ以上の値上がり益は得られません。
・損失は大きい可能性:参照資産が大きく値下がりすると、理論上は元本がゼロになる可能性もあります。
・複雑な仕組み:商品によって条件や参照資産が異なり、内容を十分に理解することが重要です。
つまり、仕組債は「高利回りのようにみえるが、実はリスクが高い商品」であり、投資判断には十分な理解と注意が必要です。
