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貯金3,500万円で悠々自適な老後のはずが…
安田崇さん(仮名/享年69)は、現役時代、大手メーカーに勤めていた。60歳で退職するころの年収はおよそ900万円。2人の娘は私立大学に通わせた。教育費で貯金は減ったものの、手元には1,500万円が残り、さらに退職金として2,000万円を受け取っている。リタイア直後の資産は合計3,500万円。老後の生活設計は万全にみえた。
住まいはひとりっ子の妻・奈美子さん(仮名/69歳)が相続した実家のため、住宅ローンもない。奈美子さんは、23歳で崇さんと結婚して以来、一度も働くことなく家庭を守ってきた。誰もが羨むようなリタイア生活が始まったが、その裏ではすでに夫婦の未来に暗雲が立ち込めていたのである。
妻が知らなかった「1,200万円の損失」
60歳から年金が支給される65歳までの5年間、崇さんは再就職を選ばなかった。「会社のために身を粉にして働いてきたんだ」という自負が強く、ようやく手にした自由を謳歌したいという気持ちでいっぱいだった。
会社の元同僚と頻繁にゴルフへ出かけ、外車を買い、自宅をリフォームするなど、その支出は現役時代を上回るほどであった。水を得た魚のように生き生きとする夫の姿を、奈美子さんは嬉しく思っていたが、家計の現実は深刻だった。
さらに悪いことに、崇さんはSNSで知り合った人物に勧められた「海外の不動産投資」の話に乗り、奈美子さんに内緒で1,200万円もの大金を投じてしまう。しかし、それは典型的な投資詐欺であった。
65歳になり、年金生活が始まった時点で、夫婦の金融資産はわずか500万円にまで激減していた。老齢年金は夫婦二人分で月額28万円ほど。これでは贅沢などできない。さすがの崇さんも事の重大さに気づいたが、妻の奈美子さんはなにも知らなかった。奈美子さんは家計の管理をすべて夫に任せ、夫の収入や貯蓄額さえ把握していなかったのである。
「月28万円もあれば、なんとか暮らしていけるだろう」。崇さんはそう自分に言い聞かせたが、不運はそれで終わらなかった。
