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富裕層を対象としたアンケート、2割が海外移住を検討と回答
日本国内の富裕層の間で「海外移住」への関心が静かに高まっているようだ。ロイヤルパートナーズ行政書士事務所(東京都港区)が運営する「バヌアツ市民権申請サポートセンター」が2025年5月9日から14日にかけて、金融資産1億円以上を保有する日本在住の富裕層673人(年齢層は30代〜70代)を対象にオンライン調査を実施。その結果、全体の21.5%が「将来的に海外移住を検討している」と回答した。
これは、単なる趣味的な海外志向ではなく、「資産防衛」や「日本社会への構造的な不安」に根差した動きとみられる。
アジア・オセアニアが圧倒的な人気、その理由とは?
調査結果によれば、海外移住を検討する層が選ぶ移住先として最も人気が高いのはアジア地域(55.2%)、次いでオセアニア地域(41.4%)となっている。具体的には、シンガポール(41.4%)、オーストラリア(33.8%)、マレーシア(30.3%)アラブ首長国連邦のドバイ(30.3%)が上位に挙がる。
これらの国・地域は、比較的治安がよく、医療水準も高く、また温暖な気候が暮らしやすさを後押ししている。さらに重要な点は、税制面の優遇だ。
今年7月に『富裕層が知っておきたい世界の税制【大洋州、アジア・中東、アメリカ編】を刊行した矢内一好氏(国際課税研究所首席研究員)は、
「シンガポールでは相続税が廃止されており、所得税の最高税率も22%(2025年時点)に抑えられている。一方、日本では所得税が最大45%、相続税も最高55%とされており、国際的に見ても“重税国家”であるとの認識が強い」
と指摘する。
富裕層が抱える「重税感」と「日本の将来不安」
今回の調査では、「海外移住を検討する理由」として以下の項目が上位を占めた。
より自由なライフスタイルを送りたい:45.5%
日本の将来に不安がある:44.1%
気候が良い国で暮らしたい:42.8%
税金が高すぎる:39.3%(自由記述より)
日本の税制は、富裕層や高所得層に対して累進的に課税する仕組みが取られており、それに加えて社会保険料も所得に応じて大きくなる。これに物価上昇、エネルギー価格の上昇、円安の影響などが重なることで、「実質的な負担感」が強まっている。
また、年金制度や医療制度、介護制度といった「社会保障の将来」への不安も、海外移住を考える一因となっている。特に若年〜中年層の富裕層は、今後数十年先までの負担や制度変更リスクを見据えた動きとして、「住む国そのものを変える」という選択肢を現実的に検討し始めている。
移住の障壁も…治安・医療・言語が懸念材料
一方で、「海外移住にあたって不安な点」についても質問がなされており、以下の項目が挙げられた。
治安:64.1%
医療環境の質や整備状況:55.2%
言語の壁:49.0%
この結果からも分かるように、富裕層であっても「海外生活」には多くの現実的課題が伴う。特に、家族帯同での移住や高齢者世帯においては、医療体制や緊急時の対応などが重要な判断材料となる。
「出ていく人」と「残される国税制度」…空洞化リスクはあるか
こうした富裕層の海外移住は、個人のライフスタイルの選択にとどまらず、日本の財政構造にも大きな影響を与えかねない。
「高額納税者が相次いで出国すれば、所得税や相続税といった基幹税目の税収が減少し、国の財政基盤が揺らぐ可能性がある。累積する国債残高による財政事情の悪化、少子化、日本の経済力の低下、予測される自然災害等、多くの不安材料がある。」(矢内氏)
実際に、日本の所得税収のかなりの割合は、上位数パーセントの高所得層によって支えられており、資産家の「静かな脱出」は、地方自治体にとっても深刻な問題となりうる。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
