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親子共倒れの時が刻々と迫る
現在利典は92歳、勇作は67歳。親子はともに年金生活者である。利典は80歳で事業を信頼する部下に譲り引退したが、1億円以上あったはずの金融資産は、息子の浪費という名の穴の開いたバケツに水を注ぎ続けた結果、いまや3,500万円まで目減りしていた。
最近では、数社のクレジットカードを限度額まで使い込み、返済に窮した勇作が600万円を貸してほしいと泣きついてきた。その前に彼は、自ら銀行に出向き「おまとめフリーローン」を申し込もうとしたらしい。しかし、無職で低年金の彼に融資が実行されるはずもなく、窓口担当者から「大変申し訳ございません。今回はご期待に沿えません」と事務的な口調で断られたという。
社会からまた拒絶されたと感じたのか、その屈辱が、さらに父親への依存を強固なものにした。利典が仕方なくその金を工面しても、息子の浪費癖に反省の色はない。
長年世話になっている税理士からは「早く施設にでも入って、勇作さんを独り立ちさせるべきです」と正論を突きつけられる。しかし利典には、それができない。生活能力のない次男を突き放せばなにをしでかすかわからないという恐怖。そして、長男の失踪という、心に穿たれたもう一つの空洞が、次男への甘さを助長させていた。
「自分があのとき、事業の成功という夢に目がくらみ、無理な移住を強いたせいで、子供たちの人生を台無しにしてしまったのではないか」。その罪悪感が、92歳になったいまも利典の心に重くのしかかる。
勇作の老齢年金は月5万円。固定資産税や老朽化した家の修繕費を、彼が一人で捻出できるはずがない。さらに、行方不明の長男の相続権の問題を解決するには、不在者財産管理人の選任など、専門的な手続きが山積している。勇作にその遂行能力はないだろう。
利典は、自らの老後資金を切り詰め、一円でも多く勇作に遺さねばという強迫観念に駆られている。そして同時に、「僕らの人生をめちゃくちゃにしたのは父さんだ」と、いつか息子に責め立てられることへの恐怖に怯えている。
52年前、夢を追って移住などせず、あのまま東京の一流ホテルで、一人のパティシエとして黙々と菓子を作り続けていれば、家族はもっと笑って暮らせていたのではないか。その答えの出ない問いが、夜な夜な利典の枕元に亡霊のように現れるのだった。
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