誰でも安心して参加できる制度となった「競売」
競売とは、特別な人達だけが参加できると思われがちです。確かに以前は競売で安く買って、すぐに転売して利ザヤを稼ぐ、その道のプロ(競売ブローカー)と呼ばれる人達だけの世界でした。
そのため、その時代を知っている人達にとっては、とにかく危険な暗いイメージが残っているはずです。しかし、昭和54年に民事執行法という法律ができ、その後数回にわたって法改正が行なわれました。
これらにより手続きが簡便化し、競売を食い物にする悪質なプロ達を競売手続きから排除し、また銀行ローンも使えるようになりました。さらに平成15年には、競売関連の法律に抜本的な改正が加えられました。
その結果、競売は一般の人達も容易に参加できるようになり、一部の不動産業者のみならず、本当に普通の人達が、マイホーム購入のひとつの手段として競売に参加している状況があります。そして、裁判所も不良債権の処理に苦心しているためか、行政でも一般人にわかりやすく、親切なサービスを行なっています。
今後もさらなる「開かれた競売」をめざして、様々な改正が行なわれていくことでしょう。
把握しておくべき競売の「デメリット」とは?
しかし、誰でも参加でき、競売価格が安いということは、それなりにデメリットも考えなければなりません。これらを十分に知らなければ、場合によっては安いどころか逆に高くついてしまうことになるからです。そのデメリットとは、競売が通常の不動産の売買と違って、次のような特殊性を有しているためです。これらのポイントをしっかり把握しましょう。
①買い受けても、すぐに住めない物件がある
通常の取引であれば、代金を相手に支払うとすぐに物件を引渡してもらえ、その不動産の名義は自分のものになります。しかし競売で買い受けたときは、裁判所に代金を支払えば名義は移りますが、場合によってはすぐに引渡しを受けることができない物件もあります。この判断ができるように、正しい知識のもとに十分な事前調査が必要です。
②物件の調査が、事前に十分できない物件がある
通常の不動産の売買であれば、購入前に物件を下見することは当然可能です。しかし、これまでの競売不動産(建物)は、所有者に無断で、勝手に物件の中に入って実際に見ることがまったくできませんでした。それが現在は法改正がなされ、売却が実施されるまでに「内覧日」が設けられ、競売参加希望者は、申し出ることにより、競売物件の内部を見ることができるという制度がつくらました。
考えてみると、不動産という高額な財産を買おうとしているわけですから、当然といえば当然ですが、これまでの競売の常識からすれば画期的な改正です。しかし、すべての物件が内覧できるというわけではありませんので、内覧以外の調査がやはり大切になります。競売物件ごとに作成される、記録簿に綴られた物件の内部写真や間取りなどの図面を確認したり、何度も足を運んで現地・現物を確認する必要があります。
③保証金の用意が必要
次に競売に参加するには、あらかじめ保証金を用意しなければなりません。通常の不動産の売買であれば、物件価格の1割~2割程度の金額を「手付金」として支払うのが普通です。競売も同じように、その物件の買い受けを希望する人は、物件ごとに決められている「買受申出保証金」という保証金を納める必要があります。この価格は「最低競売価格」という、裁判所が“これ以下の金額では売らない”と定めた価格の2割とされています。例えば最低競売価格が3000万円の物件であれば保証金は600万円です。この金額を銀行に納めた上で、初めて競売に参加(入札)することができます。
④買受物件に欠陥があっても責任の追及はできない
買ったマンションに欠陥があった(例えば、水回りの排水管工事が悪く水漏れするなど)場合、通常の売買であれば、売主に責任を追及することができます。しかし競売物件については、制度的に売主である裁判所にその責任を負ってもらうことはできません。つまり、買い受けは自己責任です。競売価格が安いのは、こういうリスクを含んでいるからといってもよいでしょう。