育ててくれた親の介護は、子どもの重要ミッション…。そのように考える人は少なくありませんが、現実問題として、やり切るだけのお金・時間・体力がある人ばかりではありません。ある50代女性会社員の例から、介護の実情を見ていきましょう。

介護をしている人628万人のうち、仕事をしている人は364万人

「お母さん。毅とも相談したんだけれど…」

 

翌日、由美さんは実家を訪れたとき、母親に切り出しました。

 

お母さんには、施設に入ってもらった方がいいと思う」

 

突然の言葉に政子さんは驚きます。

 

「えっ! 施設? 冗談でしょ…」

 

由美さんは、政子さんに介護に通うのが大変なこと、このまま自宅に独りいてもらうことを心配なことを切々と語り、弟の毅さんも賛成しており、費用が足りないぶんは払う用意があるといっていることも伝えました。

 

「独身の毅に心配かけるわけにはいかないわ。だから、あんたのところで…」

 

由美さんは黙って首を振りました。

 

総務省統計局『令和4年就業構造基本調査』によると、介護をしている人は628万人。そのうち、仕事をしている人は364万人です。介護を理由に仕事を辞める人は、毎年7万~10万人で推移しています。

 

株式会社AZWAYが行った調査では、「親の介護は誰がすべきか」という問いに対し、「自分」と答えた人は57.4%、「兄弟姉妹」30.2%、「施設」は10.2%という結果に。いまだに「親の面倒は家族がみるべき」という考え方が主流であることがうかがえます。

 

しかし、介護が原因で、仕事を失ったり、自身の健康を損ねてしまっては大変です。

 

介護をされる親の「子どもを頼りたい」と思いと、親の介護を背負う子どもの「自分の生活を守りたい」という思いの間で、どうにかしてバランスを取り、折り合いをつけなければなりません。これは切実な問題なのです。

 

 

[参考資料]

総務省統計局『令和4年就業構造基本調査』

株式会社AZWAY『両親の介護に関する調査』

 

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