「お義母さんには施設に入ってもらったらどう?」
食卓を囲みながら、2人で他愛ない話をしていると、隆さんは由美さんに「お義母さんのことなんだけどさぁ…」と切り出しました。
隆さんは、母親の世話に疲弊する由美さんのことを心配しているのです。
「お義母さんは高齢だし、元気だったころの生活には戻れないと思う。だから、施設に入ってもらったらどう? うちの両親みたいに。いまのままでは君が倒れてしまうよ」
由美さんはフルタイムの会社員で、夫との間には2人の娘がいます。5年前に次女が独立し、ようやく一息ついた矢先に、父親が亡くなりました。それ以来、ひとり残された母親は、そばに暮らす由美さんを頼りっぱなしなのです。
「僕の両親はさっさと施設に入ってしまったけれど、その方が双方のためにいいと思う。いろいろな心配をしなくていいからね。毅君と相談したらどうかな?」
「そうね、そのほうがいいかもしれない…」
由美さんはその夜、弟の毅さんに電話し、母親のことを相談しました。
「施設に入ってもらったほうがさぁ、気持ちも体も楽じゃない? 自分の親だけど、姉貴にあれだけ面倒をかけておいてお礼も言わないあの態度、オレは納得できない…」
毅さんはつい本音が出たようでした。
「手続きも手伝うし、費用が足りなかったら俺も出すからさ…」
毅さんの言葉に背中を押された由美さんは、母親に話を切り出すことにしました。
