役員報酬額の設定方法
◆適切な役員報酬額を決定するために、税理士の力を借りる
ここでは、役員報酬を実務的な側面からお話しします。
税制的な話をすると、じつは役員報酬額の基準はありません。「過大役員報酬」という形で税務署が否認することはありますが、最近はあまり問題にされないようになっている気がします。これは、税務署が裁判で負けた事例があったからなのかもしれません。
税務署の職員は、公務員です。日本国憲法では、公務員が民間の給与に干渉してはいけない、という考え方があるようです。
それ以降、税務署が慎重になり、役員報酬が高いか低いかについて明言することを避けるようになっています。
では、次のケースはどうでしょうか。
収入はアパートの賃料収入のみ、年商1,000万円の不動産保有会社があったとします。
この会社が役員報酬として、年800万円を社長に支払っていると聞いたら、「多すぎるのでは?」と感じる人も、それなりにいるのではないでしょうか。
この場合のポイントは、身内ではない第3者がその仕事をしたときにも、同等の給与/報酬を出すのかどうかです。奥様に支払っている役員報酬額を、第3者の人が同じ仕事をしても同額支払うのかどうかが、その報酬額の妥当性を考えるひとつの判断軸になります。
社長によっては、「自分は社長だから、休みの日も経営をしているよ」と言い、高額役員報酬額の正当性を主張するかもしれません。
ただこのときは、税務署側が有利になる点がひとつあります。それは、ほかにはない業種別の報酬基準額一覧を税務署が持っているということです。
税理士のわたしたちは見ることができませんが、税務署はその地域の仕事別・売上別の報酬額データの統計をとっているようなのです。それに基づき、報酬額が高すぎるのではないか、と言ってくる場合があるようです。
ただ、報酬額が統計よりも低い場合、「もっと報酬額を上げてみてはどうですか?」とアドバイスしてくれることはありません。
役員報酬額を、一般的な基準で判断することは難しいものです。ぜひ、顧問税理士と相談し、経営を圧迫することもなく、社長としての生活も維持できる報酬額はいくらなのかを決めるようにしてください。
◆社長の家族への所得移転と間違われないためには
社長の家族への所得移転と間違われないためには、家族への給料も要注意です。
たとえば奥様やお子様がその会社で働いていれば、ほかの従業員と同じようにお給料を支払います。これは、労働の対価なのでまったく問題ありません。
ところが、本当は働いていないのにもかかわらず、「お給料」としてご家族の口座に振り込むケースも散見されます。
会社の口座からご家族の口座にお金が動く場合、それは何のお金なのか、きちんと説明できなければいけません。
働いた実績がない状態で、お給料分としてご家族へお金を動かし、さらに源泉徴収もされていなければ、社長の所得移転のような形になってしまいます。
