家計の金融資産2,230兆円でも…「預金偏重」は変わらず、望まれる「相続税・贈与税」の「骨太の改正」

家計の金融資産2,230兆円でも…「預金偏重」は変わらず、望まれる「相続税・贈与税」の「骨太の改正」
(※写真はイメージです/PIXTA)

「貯蓄から投資へ」──政府が掲げる資産形成促進のスローガンのもと、日本の家計金融資産は過去最高の2,230兆円に到達しました。日経平均株価も4万円台を突破するなど市場は活況を呈していますが、家計資産の構成を見ると依然として預貯金が半数以上を占めています。本稿では、家計金融資産の推移とNISA制度の最新動向を踏まえながら、「貯蓄から投資」は本当に進んでいるのか、そして今後求められる税制改正の方向性について国際税務の専門家が考察します。

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家計の金融資産

2025年6月27日、東京株式市場では日経平均株価が大幅に続伸し、終値は4万150円79銭となりました。これは1月7日に付けた4万83円を上回り、年初来高値を更新したものです。


日銀は四半期ごとに家計の金融資産の動向を、資金循環統計(速報)として公表しています。2024年12月末時点の家計金融資産は2,230兆円と過去最高を記録し、2025年3月21日にその数値が発表されました。

 

以下に、家計金融資産の主な推移と構成比の変遷を示します。

 

1999年(平成11年)末:家計金融資産は1,389.8兆円。現預金の構成比は  53.8%。

 

1995年(平成7年)~2020年(令和2年):この25年間の構成比の変化では、現預金の割合は2006年の48.1%が最小、2019年の55.5%が最大。株式等の構成比は、2002年の5.4%が最小、2005年の12.9%が最大。

 

2022年(令和4年):家計金融資産は2,007兆円。構成比は現預金54.9%、保険19%、投資信託4.3%、上場株式6.1%。

 

2024年(令和6年)6月末:家計金融資産は2,212兆円。構成比は現預金51.0%、保険・年金・定型保証が24.6%、株式等が13.6%、投信5.8%。

 

2024年(令和6年)12月末:家計金融資産は2,230兆円。構成比は現預金50.9%、保険・年金・定型保証24.4%、株式等13.4%、投信6.1%。また、同時点のNISAによる累計買い付け額は前年比約50%増の約52兆円に達しました。

 

「貯蓄から投資へ」が骨太の方針に

2025年1月の通常国会で石破総理が行った施政方針演説では、「骨太の方針」という表現が使用されました。この用語は、2001年に小泉内閣が打ち出した「今後の経済財政運営および経済社会の構造改革に関する基本方針」が起源です。以来、政策の力強さを印象づける表現として定着しています。


小泉政権下の2001年8月8日、金融庁は「証券市場の構造改革プログラム ~個人投資家が主役の証券市場の構築に向けて~」を公表し、「貯蓄から投資への転換」を明確に打ち出しました。当時は株式市場が低迷しており、眠っている預貯金を証券市場へ誘導することが政策目標でした。


その後、岸田前首相は2021年の自民党総裁選出馬時に「金融所得課税の見直し」を掲げ、2022年5月にはロンドンで「資産所得倍増プラン」を表明。これは、預貯金から株式投資への移行を促し、国民の資産形成を図るという方向性を示すものでした。
 

NISAの利用状況と抜本的拡充

2024年6月12日付の日本経済新聞によれば、金融庁は2024年3月末時点でNISAの運用額が約41兆円、口座数が約2,322万口座と発表しました。年代別の買付額では、40〜50代が全体の約4割を占めています。

 

その後の調査では、2024年9月末時点でNISAの口座数は2,508万口座に増加。政府は「資産所得倍増プラン」に基づき、2029年までに口座数を3400万、買付額を56兆円とする目標を掲げています。なお、2024年1月からNISA制度は抜本的な改善が施行されました。

 

2024年1月以降、NISA制度は以下の点で大幅に拡充されました。

 

非課税保有期間の無期限化:従来の一般NISA(5年)、つみたてNISA(20年)に設定されていた非課税期間が無期限に。

 

年間投資枠の拡大:つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円が併用可能に。

 

口座開設期限の恒久化:これまでの期限付き制度から恒久制度へ移行。

 

非課税保有限度額の引き上げ:600万~800万円の枠が、全体で1,800万円(成長投資枠は1,200万円)に。

 

適用年齢の見直し:NISAは18歳以上に統一(ジュニアNISAは廃止)。

 

投資対象商品の整備:つみたて枠には分散投資に適した一定の投資信託、成長投資枠には上場株式・投資信託等が対象。


「貯蓄から投資」は成功したのか?

確かに、NISA制度の改善により利便性は大きく向上しました。しかし、金融資産全体に占める預貯金の割合は2024年12月末時点で50.9%と、依然として過半数を占めています。


本稿で紹介した過去25年間の統計を見ても、現預金の構成比はおおむね50%台で推移しており、大きな変化は見られません。従って、「貯蓄から投資へ」という流れは制度上整備されつつも、実際の資産構成への影響は限定的であるといえるでしょう。


今後の課題としては、高齢者が保有する大量の預貯金を、次世代に円滑に移転するための制度整備が必要です。そのためには、相続税や贈与税の「骨太な改正」を検討すべきタイミングに来ていると考えられます。
 

 

矢内一好

国際課税研究所首席研究員

 

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