よくある誤解「申告義務・税金・二重課税対策」
ここで、よくある誤解とその正しい理解を確認しておきましょう。
誤解①:海外口座なら日本で税務申告しなくてよい?
海外の口座情報はCRS(共通報告基準)により、各国の非居住者口座は国税庁に自動で報告されます。アメリカはCRS非加盟ですが、FATCA等により別途情報共有が行われています。みなさんの国外財産は国税庁も把握済です。また、アメリカのようなOECDに非加盟の国の場合でも独自のルールを設けており、脱税防止の自動化システムが構築されており、情報が共有されています。
つまり、必ず税務申告をする必要があります。
誤解②:海外法人を作れば日本の税金が逃れられる?
次に海外法人についてですが実体のない海外法人はCFC制度(タックスヘイブン対策税制)により、日本側で個人または法人所得して合算課税されます。昨今AIやCRS制度の活用で自動的に口座情報が共有されるため、留意が必要です。
誤解③:外国で税金を支払っても課税される?
最後に税金についてですが、日本以外の外国で収入を得て納税をした場合、外国税額控除を活用すれば、二重課税は避けることができます。外国税額控除の算出は複雑ですので、税理士などの専門家に依頼することをおすすめします。
つまり、ルールに則り海外で運用すれば、まったく問題ないということです。海外の法人を活用するのであれば、現地での企業活動実態を確保することを意識する、海外の銀行や証券口座で得た収益については、管理体制を整え、日本国内で適切に申告する、年間5,000万円を超える国外資産がある場合は、「国外財産調書」の提出をするなど、ルールに則っていれば海外での資産運用はまったく問題ないということです。
未来志向の海外資産管理を
海外に資産を持つことが、疑いの対象ではなく「未来志向の選択肢」になるためには、制度を正しく理解し、構造そのものに信頼性を持たせることが必要です。
情報が透明になったいま、こっそり隠すスキームはむしろリスクを高めます。
それよりも、堂々と説明できる構造を設計し、税務上も会計上も整合性の取れた運用を行うことが、長期的に見て最も安全かつ合理的です。
専門家との連携を前提に、“リスクを避けるための海外戦略”から、“可能性を広げるための海外戦略”へと視点を切り替えることが、これからのグローバル資産管理に求められているのです。
