遺族厚生年金:対象になるのは限られた遺族だけ
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた人が亡くなった場合に支給されます。対象となるのは、次のような人です。
●亡くなった人によって生計を維持されていた配偶者・子・父母・孫・祖父母(優先順位あり)
●妻は年齢に関係なく受給可能(子どもがいなくても可)
●夫は原則として55歳以上(支給開始は60歳)でないと対象にならない
遺族厚生年金の支給額の目安は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3。中高齢寡婦加算も、30歳以上の子のない妻に加算されるケースがあります。
ただし、65歳以上の人が遺族厚生年金を受け取る場合、「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と、自身の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高い方の額が遺族厚生年金の額となります。
加えて、遺族側の所得制限もあり、前年の年収が850万円以上(または所得金額655万5,000円以上)になると、支給対象外になります。たとえば、共働きで妻が高収入だった場合、夫が亡くなっても遺族年金がもらえないこともありえます。
厚生年金に過度な期待をしてはいけないワケ
典型的な「もらえないパターン」が、子どものいない自営業の夫婦です。夫が国民年金のみ(=自営業)に加入していて、子どもがいないまま亡くなった場合、妻は原則として遺族基礎年金の対象外。また、夫は厚生年金に入っていないため、遺族厚生年金ありません。
このように、制度の空白地帯にある家庭は、遺族年金がまったく支給されないことがあります。条件により「寡婦年金(60歳〜65歳の最大5年間)」や「死亡一時金(最大32万円)」が支給されることもありますが、いずれも限定的な制度です。
遺族年金はもともと、「夫が働き、妻は専業主婦」という家族モデルを前提に設計された制度です。そのため、現代のように夫婦が共働きで女性の収入が高いケースには対応しきれていないのが実情です。
制度の見直しや男女間の差を是正する動きはあるものの、現時点では遺族年金に過度な期待をするのは危険です。
というのも、遺族年金は夫が亡くなったときに、収入がない・または少ない妻を助けるために始まった制度で、現代のように妻も夫と同じぐらい稼いだり、妻の方が夫よりも稼ぎが多くなったりするようなケースには対応していないからです。
男女差を是正する方向で検討が進められてはいますが、「不平等」と感じる人がいるのも事実。例えばこんなケースもあります。
