(※画像はイメージです/PIXTA)

米国の景気後退やバブル崩壊は、なぜか決まって共和党政権下で起きている──。パパ・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュ、そしてトランプ。歴代共和党政権のたびに、市場は崩れ、大きな経済ショックが訪れてきました。背景には、政権交代時のバブル構造や、エリート層の政治的志向、さらにはマネーサプライの変動など、複雑に絡み合う要因があります。本記事では、エコノミスト・エミン・ユルマズ氏の著書『高金利・高インフレ時代の到来!エブリシング・クラッシュと新秩序』(集英社)より一部を抜粋・再編集し、米国経済に潜むリスクと、株式市場の危うい実態を読み解きます。

米国経済の運命を左右するマネーサプライ

ここでは、米国のバブル崩壊が起きるべくして起きたことを通貨供給量、すなわちマネーサプライ(M2=現金+預金+定期預金+譲渡性預金、日本銀行では2004年4月以降マネーストックと呼称)に焦点を当てる方法から読み解いてみたい。このところの各国の株価はM2に強く影響を受けている。

 

米国のS&P500とM2の推移を追ってみよう(図7)。M2が減り出したのが、FRBが引き締めを始めた2022年だった。M2を減らす前から、米国株式市場は下降局面を迎えていた。一方、23年4月からM2は横ばいになった。その前に米国株式市場は底打ちした。そして24年に入ってからM2はかなりの勢いで増えてきた。

『高金利・高インフレ時代の到来!エブリシング・クラッシュと新秩序』(集英社)より抜粋
『高金利・高インフレ時代の到来!エブリシング・クラッシュと新秩序』(集英社)より抜粋

 

翻って、日本のM2はどうなのか。図8をご覧いただきたい。日本のM2は、きれいに上がっていき、2024年4月に天井を付けた。同時に日本株の上昇もストップした。それ以降は日経平均が同年7月に史上最高値の4万2,000円を超えると、日本のM2が減少している影響で、株価も歩調を合わせて伸び悩んだ。こうした推移を考えると、米国のM2が増え続けている以上は、株価の上昇が続くはずだった。しかし、それを続けると確実にインフレが“再燃”する。

 

一方、なぜ日本がM2を止めざるを得なかったのか? 24年4月あたりから円安が加速したためだ。そのせいでM2増加にストップがかかった。

 

これは日米の景気先行指数の中身を見ても、はっきりと見て取れる。米国の先行貸出指数はいまもプラスで伸びている。それはM2を増やしているからに他ならない。一方、日本の場合はM2がマイナスになっている。しかしながら、日本の製造業関連の実体経済のほうは全部増えている。

 

また日本ではM2の伸びがマイナスに転じたとたんに、新規住宅着工件数はマイナスとなった。それで日本の不動産価格は天井に近づいた可能性が高い。

 

結局、経済はすべて通貨供給量によって動いているわけである。

 

日本に関しては、インフレが暴走して円安が止められなくなったことから、先刻も触れたたがM2増加にブレーキをかけざるを得なくなった。それで不動産価格は天井を打ち、日本株も目先の天井を打った。

 

他方、米国は2024年末までは株価を伸ばしていたが、2025年3月末には暴落に見舞われた。M2を永遠に伸ばし続けるわけにはいかない。「トランプ・インフレ」を確実に招くことになるからだ。M2を増やし続けるならば、米国はもう一度、ひどいインフレに襲われる。トランプ・インフレに襲われることになると、トランプはインフレを起こした民主党政権を選挙で打ち負かしたのに、“民主党以上”のインフレをつくってしまいかねない。

 

私が『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社、2022年)を上梓した当時は、ちょうど民主党政権がM2の蛇口を締め出した頃だった。その後、米国株は3割近くも下がった。

 


 

今回も3月末に暴落が起きて調整が起きた。米国の悲劇の責任を現政権が一手に負わなければならなくなる。

 

それでは、どうして米国はここまでジャブジャブにマネーサプライを増やせるのか。この問題に立ち返ることになる。最終的には、ドルが基軸通貨であるということに収斂する。だが、ドルの価値と威信がいまほど“毀損”していることはなかった。

 

仮に米国が高を括って、自国を世界から隔離してしまうと、ドルの信認はかつてないほどの揺らぎを見せるだろう。

 

自分たちは財政規律を課さなければいけなかった、マネーサプライをこんなに増やしたのは愚かだった、米国がそんな結論を出したとき、史上最大のバブルが崩壊するのだろう。

 

 

 

エコノミスト

エミン・ユルマズ

 

※本連載は、エミン・ユルマズ氏による書籍『高金利・高インフレ時代の到来!エブリシング・クラッシュと新秩序』(集英社)より一部を抜粋・再編集したものです。

高金利・高インフレ時代の到来! エブリシング・クラッシュと新秩序

高金利・高インフレ時代の到来! エブリシング・クラッシュと新秩序

エミン・ユルマズ

集英社

2025年4月2日、アメリカのトランプ大統領が世界に向けて発表した関税政策は、世界中に衝撃を与え、世界同時株安を招いた。NYダウやS&P、NASDAQなどの米国の株価の主要指数の暴落は一週間ほど続き、日経平均も一時は500兆円も…

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録