米国に対する信頼度低下と避けられぬトランプクラッシュ
トランプの高関税導入政策により、各国当局は舵取りが難儀な時代を迎えた。
3月のFOMC(連邦公開市場委員会)後の会見でパウエルFRB議長は「不透明感」という言葉を連発していた。関税問題が厄介なのは、どこかの国が関税を上げると、他の国も対抗してやり出す。関税合戦、貿易戦争にヒートアップしてしまうことだ。
例えばEUの鉄鋼製品は米国に輸出できなくなったら、在庫の山脈ができてしまう。そうなると自国産業を保護するために、今度は輸入に規制をかけ始めるだろう。相互関税が拡大すれば次第にブロック化が進み、各国の経済成長率の伸びの足枷(あしかせ)となる。
3月のFOMCに話を戻すと、米国はGDP成長率を下げたのに、インフレ予想を引き上げていた。つまり、今後は景気が弱くなるのにインフレは高まると見ている。これはスタグフレーションの到来を示唆したのではないか。私はそう受け取った。実際に株式市場は織り込み始めた模様である。
米国は2025年に満期を迎える国債のうち、2025年前半、すなわち今後半年間では7兆ドルの国債が償還を迎える。そのうち4.9兆ドルが長期債で、短期債は2.1兆ドルのロールオーバーとなり、米国史上最大のリファイナンスとなる。つまり、米国が7兆ドルを新たに市場で調達しないといけないという意味でもある。
しかし、長期金利が4%を超えている状態で大規模なリファイナンスをすると、後々の利払いが大変なことになることから、その前に長期金利を下げたいと思うのは当然であろう。
7兆ドルは米国の2023年のGDPの25%に相当する額だ。このリファイナンスについては相当用心深く進めなければならない。
その一方で、短期金利はFRBでコントロールできるが、長期金利はコントロールできない。長期金利を下げる手っ取り早い方法は、景気後退と相場のクラッシュを起こすことである。
これにより国債に資金シフトが起きて、長期金利が大幅に下がる。また、景気後退となればインフレも収まるし、FRBも緊急利下げをせざるを得なくなる。
仮にインフレ率が上がり、長期金利が5%に上がるようなことになれば、トランプ政権にとって最悪の事態であろう。インフレを下げるという約束で大統領になったのだから。

