事例からの教訓:高齢者詐欺は心理操作が巧妙 老親の〝寂しさ〟に気づこう
高齢者は「お金」「健康」「孤独」の三つの不安を持っています。
内閣府の「令和四年版高齢者社会白書」によると、令和2年の65歳以上人口に占める単身世帯割合は、男性が15%、女性が22%で、どちらも毎年増加しています。
高齢者の単身世帯は体力や判断力の低下に加えて孤立しやすい環境下にあるため、犯罪のターゲットになりやすいといえるでしょう。
みなさんは、豊田商事事件をご存じでしょうか。
1980年代前半に発生した、豊田商事による金の地金などを用いた悪徳商法です。高齢者を中心に全国で数万人が被害に遭い、被害総額は2,000億円近くともいわれている事件です。
電話セールスで無差別に勧誘し、脈ありと判断すると相手の家を訪問して、家に上がって線香をあげたり、買い物に付き添ったり「息子だと思ってうまく利用してください」などと信頼させ、現物ではなく紙切れの証書を発行して騙したという手口。
ですが、被害者によっては「騙されていたとしても家に来てくれてうれしかった。息子よりずっと親切にしてくれた」などと言う人もいたそうです。
そして、それから40年以上たった今も、それに近い方法で様々な業者が独居老人に近づいているという事実があります。
シロアリ商法、自宅売却トラブル、押し売りならぬ押し買い(訪問買い取り詐欺)、還付金詐欺、健康食品詐欺……。
いろんな詐欺がありますが、一番大切なことは、「もし実家の親が詐欺に遭ったとしても、決して親を責めないこと」です。
被害に遭わないための工夫については後述しますが、「騙された、また子どもに叱られる」と思うと次にまた騙された時にひた隠しにしてさらに被害が大きくなることが多いのです。
筆者も、実際に親がリフォーム商法で騙された結果、火災保険が更新できず、他で加入できるところを探すのに苦労したため、親をひどく叱った経験があります。
その後、実家に「水道の点検です」という二人組の業者を装って入り込み金品を盗むという手口で、鞄の中の財布を盗られるという事件があったのですが、盗難に遭った事実を母親がひた隠しにしていて、地元の交番からの「盗難注意! こんな事件がありました」というメールで事の顛末を知ったという笑えない話があります……。
対処の基本方針
こういった被害は「起こらないこと」が一番ではありますが、それよりもまず「怒らないこと」が大切と覚えておいてください。
「最近、そういった犯罪が増えているみたい。教えてくれてありがとう」
「それは相談してくれてよかった。命まで取られなくてよかった」
そういった、優しい言葉がけと普段から話しやすいコミュニケーションをとることが、被害を大きくしないために大切です。
本来、騙される高齢者が悪いのではありません。
悪いのは詐欺師であり、犯罪者のほうなのですから。
若杉 恵
ファイナンシャル・プランナー/公認心理師/終活アドバイザー
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