本記事のポイント
・市場が賭けるTACOトレードはうまくいく
株価はフェアバリュー、市場はトランプ政策の矛盾と限界を見破った
日本株は上値が重いが、下値も堅い。今週(2025年6月2日週)も週明けこそトランプ政権の鉄鋼アルミ関税の大幅引き上げを受けて、日経平均は一時600円安となるなど大幅安で始まったが、週末の金曜日の前引けの終値は、先週末とそれほど大きく変わらない水準にある。
世界に目を転じれば、米国ではナスダック総合株価指数は年初来リターンがプラスに転換、2月以来の高値水準に達した。最高値圏にあるドイツ株を筆頭に欧州株も好調である。世界全体の動きを示す株価指数では再び最高値を目指すところまで戻ってきた。その背景は、これまで本連載で再三述べてきたとおりである。すなわち、
1)現在の業績予想、金利の水準から導かれる理論値どおりの水準に市場価格があること――換言すれば現在の株価はフェアバリュー(適正価格)にあるということ
2)市場がトランプ政策の矛盾とその限界を見破ったこと
の2点だ。
これまでどおり、短期的にはトランプ政権の通商政策などで相場が振らされる場面はあっても、それで下押すようなところがあればすかさず買いが入る。なぜなら、上述のとおり、市場がトランプ政策の矛盾とその限界を見破ったからである。強硬的な姿勢はそのあと撤回され、最終的には落ち着くところに落ち着くしかないと市場は見切っているのである。
これを最近の欧米市場ではTACOトレードと呼んでいる。“Trump Always Chickens Out”の頭文字で、トランプ大統領はいつも最後は尻込みし、自ら掲げた強硬的な態度を翻すという意味だ。市場がTACOに気付いたのはいつか。米国のトリプル安が起きたときである。相互関税の発表から1週後に関税は発動されたが、その4月9日の日本時間の昼に、ドル・米国債・米国株(先物)が同時に売られるトリプル安が起きた。トランプ政権が関税の90日間猶予を発表したのは、その直後だ。
そのあとも、トランプ氏のパウエル議長解任の意向を受けて、ドル不信から市場の混乱が続くと、パウエル議長の解任を取り下げるとトランプ氏は発言した。これで市場は米国債やドルが売られたりするのをトランプ政権は看過できないということを知ったのである。
トランプ氏といえども、最後のところでは米国経済を守らなければならないというのが、白日のもとに明らかになったのである。