ドライバーの大量移籍を招いた根本原因
改めてこの事件を振り返ると、私の過去の経験が十分に活かされていないことに気づかされます。
一つ目は、拙速に即戦力のドライバーを大量採用したことです。面接もほぼ形だけで、人材の見極めもせずその場で次々に採用を決めてしまっていました。経験のあるドライバーほど、運送業界に蔓延する悪い価値観や旧態依然とした仕事のスタイルが染みついており、やはりこちらの経営方針やビジネスモデルにうまく順応しきれませんでした。
全てではないとしても彼らベテランドライバーの多くは「自分主義」「他責思考」で、仕事に少しでも不満があるとその矛先を会社や上司に向けてきます。
このことは私もA運輸でさんざん経験し、学習していたつもりでしたが、結果として同じ轍(てつ)を踏んでしまいました。私の側にも彼らに対するコミュニケーションやフォローが不足していたという落ち度がありました。
即戦力採用を進めたもう一つの弊害として、のちに分かったことですが、一時期、同業他社からは「Gライン(我が社)に人材を引き抜かれた」と恨みを買っていたようです。
中古のトラックすら買えない事業者も少なくないなか、これ見よがしに新車のトラックを買いそろえ、「新車のトラックに乗れます!」との触れ込みで派手に採用を進めたことや、興味関心をもって複数人で面接にきた同業ドライバーをまとめて即採用していたことが、結果として「Gラインは強引にドライバーを引き抜き、自社だけ儲けようと勝手なことをしている」というネガティブなイメージを同業他社に与えていたのです。
そういった意味では、ドライバーの大量移籍という結果を招いたことは、自業自得といえるのかもしれません。
また、営業責任者のことをさんざん悪くいってしまいましたが、改めて彼の立場に立って考えてみると、私の不在中に前例のない新しい配送プランを実行するよう命ぜられ、さらに50人ものドライバーたちの不満や愚痴を聞きながら日々マネジメントするのは、想像を絶する心労があったことでしょう。
