経営者が多忙を極めるなか入り始めた亀裂
私が大阪に出張する機会が増えたことで、約50人ものドライバーの配車管理や業務の割り振りなどのマネジメントは、福岡の事業所にいる営業責任者に任せていました。
ところが、「好事魔多し」とはこのことでしょうか。社長の私が留守にしている間に、ドライバーたちの間に徐々に亀裂が入り始めていました。
事の発端として、急ピッチで採用を進めた弊害として、ドライバーに余剰人員が発生してしまいました。
少し補足すると、私は運送業に参入する前から経営戦略として独自の配送モデルを考案していました。これは1台のトラックを2人のドライバーで回すことで、理論上はトラックのアイドルタイムを最小化して利益を倍にできる、というものです。
この配送モデルについては、営業責任者はもちろん、新たに採用したドライバーたちにも研修を通じて教え込んでいたし、このとおりに実践すればある程度余剰人員が出ても売上や利益は上がるはず、と信じて任せていました。ところが、結果としては営業責任者やドライバーの理解が不十分だったのか、実際の運用のところでうまく回しきれていなかったのです。
営業責任者から「余剰人員が出ているのでどうにかしてください」というSOSは何度か受けていました。でも、私は私で大阪営業所のことで頭がいっぱいだし、「オレが教えたとおりにやれば大丈夫だから」「そこは現場でなんとかしてくれないか」と突き放していました。むしろ、彼のマネジメント能力の低さに苛立っていたのです。
そうして現場の問題を放置し、営業責任者任せにしてしまったツケが、結果として自分に跳ね返ってきてしまいました。
ドライバーの給与は成果報酬型で稼働実績に応じて決まっていたので、仕事が回ってこないことはドライバーにとって死活問題です。暇を持て余したドライバーたちにもだんだん不満が溜まり、営業責任者にその不満をぶつけるようになります。
営業責任者も人なので、自分の言うことを聞いてくれる従順なドライバーに優先的に良い仕事を割り振ろうとします。当然、ドライバー間で不公平な状況がますます拡大していきます。
そんな状況の中から、運送経験者を中心とした反対勢力のグループができてしまい、「なんで平等に仕事を回してくれないんだよ!」などと突き上げることが常態化していました。
