「革新的なプロダクトで世の中を変える」――スタートアップ企業のビジョンを前提に税務を行う必要が
スモールビジネスが赤字の場合、主に銀行対策として決算書上の黒字化を考えなければなりません。一方、黒字の場合は、税理士が経営者から求められることの大半は節税対策だといっても過言ではありません。
もちろん、余分に税金を支払う必要はありません。合法的かつ適切な範囲内で課税を圧縮するアドバイスをすることは、それが会社の内部留保増大につながるのなら有益なことであり、やりがいのある仕事だといえます。しかし、多くの場合、スモールビジネスの経営者が求める節税は、経営者個人の経済的メリットが主眼とされています。経営者の個人的な飲食代や遊興費や高級車の購入代金、家族への外注費支払いなどを、会社の経費に計上したいといったものがその典型です。
また、最近はYouTubeなどでもスモールビジネス経営者向けの節税対策情報が出回っているため、スーツを経費にするとか出張費や社宅を使うとか、マイクロ法人を作るとか、果ては従業員を個人事業主にするとか、法的にグレーな方法も含めて、さまざまな節税対策の立案や実行が税理士に求められるようになっています。
一方、スタートアップの税務支援においてそのような節税策が求められることは、ないとはいいませんが多くはなく、少なくとも求められている役割の主眼は、そこにはありません。
その理由は、多くのスタートアップ経営者は、革新的なイノベーションに基づいたプロダクトで世の中を変える、社会課題を解決するという、大きなビジョンを目標としているからです。もちろん、スモールビジネス経営者の中にも、高いビジョンを掲げて経営にあたっている人もいることは知っています。
しかし全体を平均的に見れば、やはりスタートアップ経営者のほうが視座は高く、大きな目標の実現を目指されている方が多いかもしれません。また、経営者個人の経済的な利益に関していえば、IPOやM&Aでエグジットができれば、少なくても数億円、多ければ数百億円という資産を得られることがあり、その目標に向かって邁進している最中に、目先の個人的な微々たる金額の節税など興味は湧かないはずです。
そのため、スタートアップ経営者が私たちに期待する役割も、ビジョン実現のための税務支援であり、個人的な利得のための節税策ではないのです。
さらに、企業によっても違いますが、数年は赤字決算が続きます。IPO直前まで、場合によってはIPO後も赤字を出し続けているスタートアップもあります。そもそも赤字であったり、黒字化しても累積欠損金があったりするので、会社の利益という点では、節税対策をする必要もない状況が続きます。スモールビジネスを支援する税理士や会計事務所のほとんどが抱いているであろう、中小企業への税務支援≒節税対策という固定観念は、スタートアップには適合しないのです。
石割 由紀人
Gemstone税理士法人 公認会計士
税理士
資本政策コンサルタント
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