ストックオプションを導入したいB社の事例
B社は創業から30年程度が経ち、IPOが視野に入るという中堅企業です。Y社長とは、ある方からストックオプションの検討をしている社長がいるとご紹介されて知り合いました。ストックオプション設計から入って、その後社外役員もお引き受けするようになって、現在に至ります。
スタートアップの経営者には、大きな夢物語を語ることが好きな人もいますが、Y社長はそれとは正反対のタイプです。もちろんしっかりとした経営ビジョンをお持ちですが、大風呂敷を広げて大言壮語をしたりすることが嫌いな実直な性格の方です。
あるとき、着実に業績を伸ばしていたY社長から、ストックオプションを検討したいというご相談を受けました。ストックオプションの設計をするためには、上場後の事業規模や時価総額を想定して、株価を算定しなければなりません。
しかし、私がそういった話をしても、Y社長はそんな先の分からないことを口先だけで言うのは嫌だ、経営は行動と結果で示すものだとお考えでした。私は、出資を受けて証券市場に上場するということは、投資家に対して将来の成長可能性をあらかじめきちんと説明して見せるようにしなければいけないといったことを、何度かご説明しました。
Y社長は、同業の上場企業X社を事業上のベンチマークとしていました。しかし、Y社長の将来想定では同業のベンチマークとしている企業のPERから推計すると、IPO時点の時価総額がかなり低くなってしまいます。
そこで、私は、Y社長がベンチマークとしているX社の有価証券報告書などの公開資料を基に、増資やストックオプションの付与割合などを含めて、分かる範囲で上場前の資本政策を推定しました。
そして、B社の人員に当てはめて、同じようなストックオプションを付与した場合、その額が相当小さくなってしまうということをY社長に示しました。ストックオプションは、大企業ほどの高い給与を支払えず不安定でもあるスタートアップが優秀な人材を定着させるための施策であり、その額が小さすぎれば実施する意味が薄れます。
ベンチマークとしていたX社の上場前の資本政策を知り、Y社長は将来像を修正して、エクイティストーリーをブラッシュアップしました。結果として、役員や社員に適正な額のストックオプションを付与できました。
