中小企業向けの税務とスタートアップ企業支援を目的にした税務の違い
公認会計士や税理士のキャリアの選択肢の一つとして、私たちがおこなっている「スタートアップ支援税務」があります。スタートアップ支援税務という言葉は、私たちの業務を表現する造語であり、一般的に用いられている言葉ではありません。そこで、スタートアップ支援税務の概略について説明しておきます。
スタートアップ支援税務の対象は、IPOを目指すスタートアップ企業です。公認会計士がIPOを目指すスタートアップ企業を支援すると聞くと、IPO支援業務(IPOコンサルティング)を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし私たちのスタートアップ支援税務は、IPOコンサルティングと一部重なる業務はありつつも、基本的にはまったく異なります。私たちの業務の中心となるのは、その名のとおり、記帳代行、給与計算、税務相談、税務監査、決算書作成、税務申告などのベーシックな税務業務だからです。これらの業務は、通常の会計事務所(税理士事務所)がおこなっている業務との違いはありません。税法に則った業務ですから当たり前です。
しかし、ただの税務顧問ではなく、スタートアップ支援税務と表現しているのは、通常の税理士法人が提供している、中小企業向けの税務サービスを提供するだけではないからです。
どういうことかというと、スタートアップ企業は中小企業としてスタートし、短期間で上場企業へと変化する(少なくともそれを目指す)企業です。そして、中小企業の税務と上場企業の税務は、内容が異なる部分があります。そのすべての段階の税務に対応できるということが、スタートアップ支援税務の大きな特徴です。
また、税務以外にも資本政策や株価算定、ストックオプション設計、ストックオプション評価、資金調達・ファイナンスのアドバイス、初期的な内部統制、J-KISS、監査法人対応といった会計に関係するバックオフィス業務の支援も、スタートアップ支援税務に含まれます。
さらに、スタートアップ事業の本質を理解して、スタートアップの経営者と一緒にエクイティストーリーを考えるという社外CFO的役割も期待されますし、場合によっては、組織運営や事業戦略に関する壁打ち相手などの経営参謀的役割を果たすこともあります。
ただし私の場合、スタートアップ支援税務という名のとおり、あくまで業務の中心は税務であり、それ以外は付随的なものだといえます。N‒2期以降のIPOに必要な実務、規程作成や内部統制コンサル、開示資料の作成などはあえておこなっていません。上場を前にしたそれらの準備実務は、いわゆるIPOコンサルタントと連携し専門家をスタートアップに紹介しています。
