「令和の米騒動」のマクロ経済へのインパクト
現在、日本の名目GDPは約624.8兆円、個人消費は約338兆円ですから(2025年1-3月期の速報値、年率換算)、主食米の出費の概算値である6兆円は、日本の個人消費の約1.7%に相当する金額になります。ちなみに、昨年の今頃のコメの店頭価格(5キロ)は2,160円なので、この1年間でコメのための出費が約3兆円増加する計算になります。
税率10%の消費税の税収が約24.9兆円(2024年度見込み)ですから、この3兆円という金額は消費税でいえば約1.2%の税率に相当する金額になります。こうした数字を見る限り、「令和の米騒動」のマクロ経済へのインパクトは決して小さくないように思われます。政府は3月から備蓄米の放出を開始してコメ価格の引き下げに動いていますが、一部で指摘される流通での目詰まりなどもあってか、コメ価格の高騰に歯止めがかからない状況が続いています。こうした記録的なコメ価格の高騰の背景には、いったい何が有るのでしょうか。
マーケット視点で読み解く「令和の米騒動」
なぜ1年でほぼ倍になるような記録的なコメ価格の高騰が起きるのか、まずは、米の需給に関するデータとコメ価格の動向を見てみましょう。農水省の発表によれば、今から17年前の2008年度の主食用米の需要は年間約855万トン、供給は約866万トン、民間在庫(各年6月末)は約160万トンでした。そして、需要・供給ともに一貫して右肩下がりを続けて、2024年度には需要が約705万トン、供給は679万トンまで減少しています。
この間の「米類」のCPIの推移(9月から翌年8月までの平均値)を見ると、コメ価格の前年比と米の需給ギャップ(需要-(供給+民間在庫))は概ね連動して変動しており[図表2-1]、二つの数字の関連の強さを示す相関係数は約0.73となっており[図表2-2]、統計的に見て強い相関関係にあることが確認できます。
株であれ、債券であれ、商品市況であれ、マーケットでは「売り手」と「買い手」が自己の利益を最大化するよう振る舞うことで「適正価格が決まる」とされています。そして、コメの需給と価格の関係から見えてくるのは、他の市場と同様な「マーケットメカニズム」の存在ではないでしょうか。つまり、マーケット視点から見た「令和の米騒動」は、主食用米の需給の引き締まりが起点となった「自然な値動き」とすることができそうです。



