15年間続く“見えない献金”
相談者の大山麻衣子さん(仮名)が義母の異変に気づいたのは、15年ほど前。義母はある宗教団体に入信しました。最初は「集会に週一度行っている程度」と話していた義母でしたが、次第にその生活は宗教中心に変化していきます。家の購入、引っ越し、転職、財産の使い道……すべての決定を、“先生”に相談するようになったのです。
「私、死んだら財産は全部お布施にするつもり」
そう口にした義母の表情は、どこまでも真剣だったそう。誰にも明かさないお布施の金額。なにに、いくら使っているのか。――家族の誰も知りません。麻衣子さん夫婦は、義母の金銭感覚が把握できないことに、不安を募らせていきました。
家族が絶句した義母の言葉
義母は74歳。先日、再婚した2人目の夫を亡くしました。相続によって、預金7,000万円と都内一等地にある一戸建てを手に入れ、羽振りがよくなっていました。麻衣子さんが最も衝撃を受けたのは、義母が18歳の甥孫(おいまご)に対して放った言葉。
「学費と一人暮らしの費用はすべて私が出してあげるわよ。でも、この宗教に入ってくれるならね」
進学を“信仰の見返り”に使うような言動に、家族は耳を疑いました。家族だけでなく親戚や兄弟家族にまで話をするようになってしまっていました。
「この宗教に入らない人はみんな不幸になる」
「あなたたちは信じないから地獄に行くのよ」
そういって、信仰を共有しない麻衣子さんらを突き放すようになったのです。
一方で、義母自身は「私はあなたたちの幸せを願っているだけ」と話しており、そこにあるのは本人の“救い”と家族の“断絶”のすれ違いでした。
