大の里、全勝逸すも「史上最速横綱」の金字塔!東京場所懸賞本数が3場所連続で史上最高更新【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

景気の予告信号灯としての身近なデータ(2025年5月26日)

大の里、全勝逸すも「史上最速横綱」の金字塔!東京場所懸賞本数が3場所連続で史上最高更新【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
(※画像はイメージです/PIXTA)

大の里の劇的な横綱昇進や、活況を呈する懸賞金の状況は、多くの相撲ファンを沸かせるとともに、経済的な側面からも注目されています。過去のデータに目を向けると、新横綱が誕生し、新横綱として初めての場所で優勝する際には景気が拡張局面にあるという興味深い傾向がみられます。本稿では「令和7年大相撲夏場所」を取り上げます。エコノミスト・宅森昭吉氏の解説をみていきましょう。

大の里、夏場所制覇で歴史的快挙

夏場所13日目、大関・大の里が無傷の13連勝で優勝を決める。夏場所は14勝1敗で春場所に続き優勝、横綱昇進へ。

 

大相撲夏場所13日目に大の里が琴桜との大関対決を寄り切りで制し、無傷の13連勝で2場所連続4度目の優勝を決め、場所後の横綱昇進を確実としました。令和5年(2023年)夏場所の幕下10枚目格付け出しの初土俵から所要13場所での横綱昇進は、年6場所制が定着した昭和33年(1958年)以降で、同じ石川県出身の輪島の21場所を大きく更新しました。

 

日本出身では平成29年(2017年)初場所後に昇進した大の里の師匠である稀勢の里(現・二所ノ関親方)以来8年ぶりとなります。残念ながら、千秋楽結びの一番で、大の里は横綱豊昇龍に上手ひねりで敗れ、全勝優勝は逃しました。オープンカーに乗っての優勝パレードでは、小結・高安が旗手を務めました。

 

大の里はNHKの優勝インタビューの中で、14勝1敗の優勝を果たしたいまの気持ちを聞かれて「最後負けてしまいましたがうれしいです」「全勝優勝したかった。それはかなわなかった。また次、頑張りたいです」と答えました。綱とりの重圧はという質問には「ないといったら嘘になりますけど。4月の春巡業で綱とり、横綱という言葉をたくさんかけてもらった。場所前に綱とりのことをいわれても耳が慣れていて、なにも考えず場所に臨めた」と述べました。

 

場所前の故郷・石川県での巡業について「巡業ではたくさん声援いただいた。それを5月場所でと思っていた。優勝を届けることができてよかった」と述べました。大の里は能登半島地震で被災した石川県能登地方に明るいニュースを届けたことになります。横綱昇進に向けて臨時理事会の開催が決まったことについては、「水曜日にいい報告が聞けるようにいまは待ちたいなと思います」と語っていました。

 

2025年10月にロイヤル・アルバート・ホールでロンドン公演が開催されます。海外公演は2005年の米ラスベガス以来20年ぶりです。続いて、2026年6月にパリでも海外公演が開催されます。パリで公演が行われるのは3回目で、1995年以来31年ぶりです。東西2人の横綱土俵入りが披露されることは、相撲文化発信という点においても影響が大きいでしょう。

 

出所:日本相撲協会、各種報道
[図表1]最近の大相撲本場所懸賞本数推移 出所:日本相撲協会、各種報道

懸賞本数は過去最高を更新、企業収益の好調さが土俵にも波及か

夏場所の懸賞本数は両国国技館開催場所で3連続過去最高を更新。なお、春場所も地方場所での過去最高更新。企業の広告費、収益の好調さを裏付け。

 

春場所の懸賞本数は2,152本で、地方場所では過去最高を更新しました。夏場所は事前申し込みが2,916本で初場所の2,955本を下回り過去最高更新が懸念されましたが、実績は2,849本でこれまで最高の初場所の2,815本を上回りました。前年同場所比は+43.9%と高い伸び率でした。これで11場所連続の前年同場所比増加になりました。

 

夏場所の懸賞本数は両国国技館開催の場所で、3連続過去最高更新となりました。これは、全体でみても過去最高本数の更新であり、引き続き企業の広告費や収益の好調さを裏付ける結果です。

 

出所:日本相撲協会、各種報道
[図表2]最近の大相撲本場所懸賞本数推移 出所:日本相撲協会、各種報道

 

夏場所千秋楽結びの一番、横綱・豊昇龍と大関・大の里の取組に懸かったのは、60本でした。歴代8位タイの多い本数です。

 

出所:各種資料から筆者作成
[図表3]60本数以上の懸賞がかけられた取組 出所:各種資料から筆者作成

千秋楽に大の里に勝った横綱・豊昇龍が逆転で懸賞本数トップに

夏場所優勝の大関・大の里、獲得懸賞本数は470本で初場所の327本を上回るも第2位。15日間結びの一番を取り続けた豊昇龍の509本が第1位に。

 

夏場所で一番多く懸賞を獲得したのは、千秋楽結びの一番で大関・大の里の全勝優勝を阻止した横綱・豊昇龍の509本でした。一人横綱として15日間結びの一番を取り続けたことで、12勝3敗でも夏場所で最も多く懸賞を獲得しました。

 

大関・大の里は470本で、初場所の327本を上回ったものの第2位。3場所連続第1位を逃しました。

 

豊昇龍に土をつけた関脇・霧島が獲得した懸賞は165本で第3位。同じく豊昇龍に土をつけた関脇・霧島は、165本の懸賞を獲得し第3位に入りました。同じく豊昇龍から白星を挙げた前頭筆頭・王鵬が第4位。8勝7敗と勝ち越した大関・琴桜は140本で第5位という結果でした。

 

出所:日刊スポーツ
[図表4]大相撲夏場所懸賞獲得ベスト5 出所:日刊スポーツ

新横綱Vは景気拡大のサイン?

15日制になって新横綱の場所で優勝した横綱の昇進時・優勝時の景気は過去5回ともすべて拡張局面。大の里の名古屋場所での、師匠の師匠、師匠に続き3代連続新横綱での優勝なるかに注目。

 

15日制になって新横綱での優勝は、

 

昭和36年(1961年)九州場所の第48代横綱・大鵬(13勝2敗)

昭和58年(1983年)秋場所の第59代横綱・隆の里(全勝)

平成7年(1995年)初場所の第65代横綱・貴乃花(13勝2敗)

平成29年(2017年)春場所の第72代横綱・稀勢の里(13勝2敗)

令和3年(2021年)秋場所の第73代横綱・照ノ富士(13勝2敗)

 

上記5人です。新横綱の昇進時・優勝時の景気は、過去5回ともすべて拡張局面に当たっています。

 

また、年6場所制後で、雲竜型の新横綱で初日から2連勝したのは11人、すべて景気拡張局面に当たっています。大の里の師匠、稀勢の里は雲竜型を採用していました。稀勢の里の師匠である隆の里は不知火型、隆の里の師匠である初代・若乃花は雲竜型で、大の里がどちらの型を選ぶか注目されます。

 

春場所は雲竜型を選択した新横綱・豊昇龍誕生で2つのジンクス達成が期待されましたが、初日は黒星で、途中休場になってしまいました。新横綱・豊昇龍は景気が拡張局面であることを裏付ける活躍はできませんでした。

 

新横綱・大の里が、師匠の師匠の隆の里、師匠の稀勢の里に続き、3代連続で新横綱での優勝を果たすか。名古屋場所での活躍が注目されます。

 

出所:各種資料
[図表5]歴代新横綱の最初の2番の成績と土俵入りの型と景気局面、優勝と景気局面 出所:各種資料

 

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

 

 

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

 

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