景気回復に陰り…4月現状判断DIが大幅低下、2年2ヵ月ぶり低水準
25年4月の「景気ウォッチャー調査」で、現状判断DI(季節調整値)は前月差2.5ポイント低下の42.6になりました。4ヵ月連続の低下で、22年2月37.4以来の低水準です。先行き判断DI(季節調整値)は、前月差2.5ポイント低下の42.7でした。5ヵ月連続の低下で、21年4月41.8以来の低水準です。物価高の影響やアメリカの関税政策への懸念が高まったことなどで、両DIとも低下しました。
なお、原数値でみると、3月現状判断DIは前月差3.2ポイント低下の44.6となり、先行き判断DIは前月差3.2ポイント低下の43.4になりました。
内閣府の4月の現状に関する基調判断は、「景気は、このところ回復に弱さがみられる」で、「景気は、緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」とした3月から下方修正されました。
先行きについて、4月は「賃上げへの期待がある一方、従前からみられる価格上昇の影響に加え、米国の通商政策の影響への懸念が強まっている」とされており、「賃上げへの期待がある一方、従前からみられる価格上昇の影響に加え、米国の通商政策への懸念もみられる」だった3月からは語尾が厳しい表現に下方修正されました。
現状判断DIは沖縄のみ50超、7月新オープンのテーマパークによる影響か?
4月現状判断DI、沖縄だけが50超。沖縄の先行き判断DIは21年9月以降3年8ヵ月連続50超。「やんばる」の新しいテーマパークの影響は。
地域別にみた4月の現状判断DIを12地域でみると、すべての地域で景気判断の分岐点の50を下回った3月から、沖縄だけが改善し50超になりました。沖縄の4月は51.5と3ヵ月ぶりの50超です。一方、沖縄の先行き判断DIは57.6になりました。21年9月以降3年8ヵ月連続50超が続いています。
7月25日に、「やんばる」の自然を生かした新しいテーマパーク「ジャングリア沖縄」が開業することへの期待も大きいようです。「7月には大型レジャー施設の開業を控えており、国内の首都圏では宿泊費が高騰していることからも、国内外からの観光客増加に期待している」というコンビニの経営企画担当のコメントがありました。
物価高に関心も集まり「価格or物価」関連現状判断DIは低下
4月「価格or物価」関連現状判断DIは36.6で、23年1月の35.1以来の低い水準になりました。3月の39.4から2.8ポイント低下しました。現状判断のコメント数は3月の276名から317名へと41名増加しています。
4月「価格or物価」関連先行き判断DIは37.4で、こちらは23年以降の最低水準だった23年1月の38.2を下回る低い水準に。
「価格or物価」の景気に与える影響は4月で、現状も先行きも一段と悪化しました。
「関税」関連判断DIへのコメント数は1ヵ月で3.7倍に増加
4月はトランプ大統領の関税に関するさまざまな発言に振り回されました。毎日のように「関税」に関するニュースが流れるなか、先行きの不透明感が景気ウォッチャーのあいだでどんどん高まっている感が強い状況です。
ただし、4月月調査「関税」関連先行き判断DIは、34.6に低下、2月35.7、3月37.5に続き3ヵ月連続30台の低水準に。コメント数は249名で、24年12月7名、1月14名、2月35名、3月68名に続き、大幅に増加しました。
なお「トランプ米国大統領」関連先行き判断DIは就任前の12月に50.0でしたが、1月46.4、2月43.8、3月37.5、4月27.1と就任後は毎月悪化しています。
インバウンド関連判断DIは50付近で停滞気味
25年1月の「外国人orインバウンド」関連の現状判断DIは55.9、同先行き判断DIは55.6で、どちらも12月の60台から揃って50台に低下しました。2月の「外国人orインバウンド」関連の現状判断DIは53.6、同先行き判断DIは59.5。3月「外国人orインバウンド」関連の現状判断DI、同先行き判断DIとも56.2で50台でした。
4月の「外国人orインバウンド」関連の現状判断DIは51.1、同先行き判断DIは50.6で、ともに景気判断の分岐店を僅かに上回るパッとしない水準に低下しました。
「前月に続いてインバウンド売上が前年を下回っている。来客数自体は減っていないが、主な購入品目が海外のブランド品から化粧品などにシフトしており、購入額が減少している」という、近畿の百貨店(外相担当)のコメントが現状判断でありました。また、先行き判断のなかには、「7月に日本で大地震が起こるという噂がアジアで広まり、航空機の減便等も予定されていることから、インバウンドの減少が予想される」という、東北の都市型ホテル(スタッフ)のコメントがありました。
開幕月の「万博」関連現状判断DIは50超、コメント数も最高値更新
大阪・関西万博が4月13日に開幕しました。「景気ウォッチャー調査」の先行き判断でのコメント数は11月までは1ケタで関心の薄さが気懸かりでしたが、12月10名、1月6名、2月45名、3月59名まで増加してきました。
4月の「万博」関連現状判断DIは50.6と判断分岐点の50を僅かですが、上回りました。コメント数は39名まで増加。4月の「万博」関連先行き判断DIは57.5になりました。コメント数は60名で3月を1名ですが上回り、最高を更新しました。
「不安」関連判断DI低下、先行きの一段の不透明さ反映か
先行きの不透明さが一段と高まったことが「景気ウォッチャー調査」からもわかります。4月の「不安」関連先行き判断DIは35.7になりました。コメント数は89名です。3月「不安」関連先行き判断DIは40.4、コメント数は57名だったので、DIは4.7ポイント低下、コメント数は1.6倍になりました。
企業の先行き不透明さの高まりは、4月の「設備投資」関連判断DIに悪影響をもたらしたようです。現状判断DI39.6、先行き判断DI40.6とともに40程度に低下しました。3月は現状判断DI55.2、先行き判断DI54.2とともに55程度でした。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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