株式の評価額は相続税額を大きく左右するだけに・・・
法人を使いどのような形で親の資産を子どもの資産として移すかについて、具体例を用いながら、もう少し詳しく説明しましょう。
例えば「現物出資」の場合、親の資産を子どもの会社に移すときに、親は現物出資した分だけ「株式」で対価を受け取ることになります。
子どもが100万円の資本金で会社を作って、そこに親が1億円の資産を現物出資することになると、親は1億円分の株式を受け取ることになります。しかし、これでは100万円対1億円の出資比率となってしまい、この状態のまま相続のタイミングを迎えてしまうと相続税対策としては相続財産の圧縮効果があまりありません。
ただし、株式に関しても通常の相続税と同じ計算になりますが、相続の場合は、設立した法人の株式の評価額がいくらになるかで、相続税にも大きな差が出てきます。ちなみに、株式の評価は勝手に決めることはできません。国税庁の通達などで示された方法によって評価されます。
非上場株式の評価方法は基本的に2種類
プライベートカンパニーのような非上場株式の評価方法というのは、大きく分けて次の2つの方法で行われます。
●純資産価額方式
●類似業種比準価額方式
この2つの方式のうち、会社の正味財産価値から評価する純資産価額方式のほうが類似業種比準価額方式よりも株価が高くなるのが普通です。特に、資産に占める土地の割合が高い会社の場合、土地保有特定会社となり、純資産価額のみで評価することになりますが、その場合でもこの純資産価額より「20%」安く評価した金額を採用します。
一方の類似業種比準価額方式ですが、この方式は同業種で株式上場している会社の株価などを参考に、その会社の株式が流通していた場合を想定して株価を決定するもので、株価が低迷している時代にはかなり安く評価されます。
相続税の計算では株価が低く評価されれば、それだけ相続税が安くなりますから、類似業種比準価額方式を使いたいと思うのが当然ですが、この方式を100%使うためには一定の条件が必要です。業種や会社の規模によって異なりますが、不動産運営会社の場合は、例えば従業員50人以上といったさまざまな要件があることから、通常、この方式で株価を100%評価することはむずかしいといえるでしょう。
ただ、プライベートカンパニーで従業員50人といった規模を確保するのは、なかなか大変ですが、資産規模でみれば、実はそうでもありません。都内でいえば、山手線の最寄り駅から徒歩5分以内の場所に商業ビルなどを持っているオーナーであれば、総資産10億円といったもうひとつの基準はクリアしそうです。
とはいえ、相続税対策のための普通のプライベートカンパニーでは「小会社」としてカテゴライズされるので、全額を類似業種比準価額方式で評価するのは不可能と考えてよいでしょう。
小会社に該当する場合は、両方式で50%ずつ適用して、株価の評価を行うことになっています。ちなみに、この純資産価額方式と類似業種比準価額方式の割合は、会社の規模によって純資産価額方式が0〜50%と段階的に適用されます。会社が大きくなればなるほど、純資産価額の比率は低くなります。ただよほどの資産家でない限り、純資産価額方式の評価は40〜50%と考えてよいでしょう。
ちなみに、純資産価額方式で100%評価することも可能です。純資産がほとんどないという会社は、純資産価額方式を採用したほうがトクなケースもあるはずです。また、例外的に「配当還元法」という方式もありますが、これは特殊なケースです。