税務調査官「これは外注費では落とせません」→まさかの追徴課税も…知人への仕事のギャラは給与?外注費?〈5つの判定基準〉を税理士が解説

税務調査官「これは外注費では落とせません」→まさかの追徴課税も…知人への仕事のギャラは給与?外注費?〈5つの判定基準〉を税理士が解説
(※写真はイメージです/PIXTA)

テレワークが普及し仕事を外注しやすくなった昨今、「給与か外注費か」の判断があいまいなまま、とりあえず外注費で落としてしまい、あとになって追徴課税されてしまうといったケースが続出しています。本稿では、板山翔税理士が国税庁が公表する「給与か外注費か」の5つの判定基準について、わかりやすく解説します。

外注費を給与と認定された場合の追徴税額

税務調査で外注費を給与と認定された場合、給与から差し引くべきだった“源泉所得税の追徴”と、“消費税の仕入税額控除の否認”のダブルパンチを食らうことになります。

 

1. 源泉所得税の追徴

「給与なのに源泉徴収していなかった」となると、本来は源泉徴収すべきであった未納の所得税だけでなく、不納付加算税(通常10%)や延滞税といったペナルティも課されます。 

 

未納の所得税については、報酬を支払っていた相手から徴収すればよい話ですが、すでに取引がなくなっていると回収できずに会社が肩代わりするケースも少なくありません。

 

また、過去3年~5年(故意の脱税とみなされた場合は最大7年)分までさかのぼって納税する必要があるので、金額も多額になりやすいです。

 

2. 消費税の仕入税額控除の否認

外注費を支払う場合は、消費税10%を支払ったものとして、消費税の仕入税額控除が受けられ、消費税の納税額を減額してもらえます。(相手が免税事業者なら現状は8割控除なので、10%→8%控除に下がります)

 

しかし、外注費が給与だと認定された場合、給与は消費税の不課税取引であるため、消費税10%は支払っていなかったものとして、消費税の仕入税額控除が否認され、消費税の納税額が増えます。

 

こちらも過去3年~5年(故意の脱税とみなされた場合は最大7年)分の外注費の約10%の消費税額となるとかなりの金額になりますし、過少申告加算税(税務調査通知後なら10%~15%)や延滞税といったペナルティも課されますのでリスクは大きいです。

 

 「まあいっか」で済ませず、  しっかり判断しておくのがおすすめです。

給与認定されるリスクを減らす5つの方法

では、どうすればリスクを減らせるのか? 最低限やっておきたいのは、以下の5点です。

 

1. 請負契約書をちゃんと作る

雇用契約か請負契約かは契約書の文言ではなく実態で判断されるとはいったものの、請負契約書がないと税務署に「実態は雇用では?」と見られてしまいます。

 

それに請負契約書のような確固たる証拠がないと、税務調査や裁判で反論するうえでも圧倒的に不利な立場になります。

 

また、外注先に雇用契約ではなく請負契約であり、事業所得(または雑所得)として確定申告が必要であることを明確に認識してもらうためにも、やはり契約書は欠かせません。ここを曖昧にして認識がズレていると、やはり税務調査で反論できなくなります。

 

請負契約書(または業務委託契約書)に業務内容、納期、報酬条件、代替性の有無などを明記しておきましょう。

 

2. 仕事の進め方は相手に任せる

作業手順や方法まで細かく指示すると、指揮命令関係があると判断されてしまいます。

 

成果物に対する責任は外注先に任せ、進行方法には口を出しすぎないよう注意が必要です。ある程度管理が必要な場合でも、勤務時間や作業過程ではなく、成果物の品質や納期を管理するようにしましょう。

 

3.  請求書は相手に作成してもらう

請求書をこちらで作成してしまうと、こちらで給与計算をして給与明細を渡しているのと同じように見えてしまいますよね。

 

また、請求書すら作成できない相手が独立して事業を行っているとも言い難いです。納品後に外注先の名前で請求書を発行してもらうことで、独立性が示せます。

 

4. 報酬は時間ではなく成果に対して支払う

報酬を月額や時給で支払っていると給与と見なされがちです。「動画1本〇万円」「記事1本〇万円」など、仕事の成果に応じて報酬を設定しましょう。

 

私たち税理士業界でも、毎月固定で顧問料を請求したり、作業時間で請求したりするケースもありますし、月額固定報酬や時間単価計算が絶対ダメというわけではありません。

 

しかし、そのような方法を採る場合でも、欠勤控除や残業代などの労務対価的な報酬形態は避けましょう。

 

5. 機材はできるだけ相手に用意してもらう

作業に必要なパソコンや工具を会社が提供していると、従業員と同じように見なされやすいです。外注先に用意してもらうか、貸与は最小限にとどめるのがベターです。

 

とくに、相手が“元社員”や“知人”の場合、関係性があるので契約書もなく色んな仕事をあれこれ指示したり、機材はこちらで用意してあげて、なんなら請求書までこっちで作ってあげたり、実態が雇用に近くなってしまうケースもよく見かけます。

 

一度、契約の内容と働き方を見直してみて、少なくともあなた自身は外注費だと自信を持っていえるような状態に変えていきましょう。

まとめ

「給与」か「外注費」かで迷ったら…

・契約書より“実態”で判断される 

・5つの判定基準(指揮命令/勤務時間/代替性/成果報酬/機材負担)で総合判断する 

・給与と認定されたら追徴課税もあるので注意!

 

曖昧な契約のまま放置していると、あとから多額の追徴につながるリスクがあります。知人とのやりとりこそ、しっかり線引きをしておくことが大切です。

 

 

板山 翔

板山翔税理士事務所 代表、税理士

 

 

 

 

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